欧州の歴史に学ぶ

何度か登場してますが、最近歴史マンガにハマってます。

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)
(2004/10/22)
岩明 均

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チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)
(2006/10/23)
惣領 冬実

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「ヒストリエ」は古代オリエント、「チェーザレ」はルネサンス期と時代は違いますが、どちらも欧州が舞台。

前の会社も今の会社もそうですが、僕が勤めているのは、いわゆる「欧州系」の企業です。
今の会社では聞かれることはないですが、前の会社では、よく「欧州系と米系はどう違うのか」とクライアントやら学生さんやらに聞かれたものです。
欧州系でも米系でも働いているのは日本人が多いので、実際のところはそれほど大きな差はないように思いますが、僕が答えてたのは以下の3つです。

①多様性
アメリカは1つの国、欧州はたくさんの国の集まり。
たくさんの国の集まりである欧州は、国によって民族も違えば、言語も違うし、文化、生活習慣も違う。
今はEUで統合されていると思う人もいるかもしれませんが、実際住んでみた人にはわかるとおり、国が変わると全てが変わると言っていいほどいろいろ違います。
日本企業なんかでたまに「欧州戦略」なんて言い方を耳にしますが、国によって攻め方が違うことへの認識が甘いままに欧州を一括りに考えるとなかなかうまくいきません。
欧州企業にはドイツ人、イギリス人、フランス人、イタリア人など様々な国籍の人が一緒に働いていて、「いろんな考え方、働き方があるよね」というのを肌で理解して生きてきたのが欧州。
アメリカも人種のるつぼとか言いますが、欧州と比べれば"This is America"的な1つの価値観でお互いを理解しやすいのかもしれません。

②時間軸
アメリカは短期的、欧州は長期的。
アメリカは株式市場至上主義なので、トップマネジメントも四半期ごとに評価されるため、短期的な業績の上下に目を向けがち。
一方の欧州、実はそもそも上場企業自体が少なくて、家族経営のプライベート企業が多いんです。
そのため株式市場の影響がアメリカほどではなく、比較的長期的に物事の考えることができます。
イタリアのアパレルブランドなんかでよく見られるような、中世の頃から続いていて、今もブランドの価値を守りつつ、家族経営を続けている、というような会社が生き残れるのも欧州ならではでしょうか。
この違いがどこから来てるのかというと、結局は欧州とアメリカでは歴史の長さが違いでしょうか。長い歴史を持つぶん、欧州のほうが長い時間軸で物事を考えるのかもしれません。

③ライフサイクル
人にたとえれば、アメリカは壮年、欧州は老人。
②とも少しかぶりますが、欧州の歴史は長く、一時は世界の覇権をとり世界中に植民地を作り、そして二度の大戦を経て覇権をアメリカに奪われたという歴史があります。
旅行してみるだけでもわかるとおり、アジアはエネルギーあふれ、成長著しい、いわば若者。
アメリカは、元気がなくなったとはいえ今でも世界最大の大国、人生でいうと壮年期。
それに対して欧州は明らかに老人。
おそらく50年後も街の風景はほとんど変わらないだろうと思わされるし、人々の考え方もいい意味でも悪い意味でも「成熟」しています。
労働生産性が高く、短い労働時間で日本企業と競り合えるのも長い歴史の中での改善と優先順位付けが一段進んでいるからのような気がしますし、規制なんかを含むEUの政策を見てても、大欧州として世界にうってでるよりは、アジアや米国の企業に欧州企業が脅かされないよう「域内」経済を守る、ということに主眼が置かれているように感じます。
国家がますます成熟すると社会構造がどう変わるか、この点は日本も欧州から学ぶことが多そうです。

すっかり話がそれたのですが、欧州の歴史は多様な国家、民族による闘争の歴史であり、国家や民族の衝突と分裂、融合の繰り返しです。
その歴史は複雑であり、人はどうあるべきか、社会とはなにか、などなどへの示唆が満載。
なかでも上記2つのマンガは、文句なしにおすすめです。
歴史好きならそれだけでおもしろいでしょうし、そうでなくても、欧州の歴史が持つ壮大な人間ドラマにわくわくすることと思います。
唯一の難点は…どちらもなかなか新刊が出ないことですかね。

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