立ち上がれ日本人


立ち上がれ日本人 (新潮新書)立ち上がれ日本人 (新潮新書)
(2003/12)
マハティール モハマド

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マレーシアの元首相マハティール氏による、資本主義の欠点から中国とのつきあい方、イスラム世界、日本への叱咤激励まで多岐にわたる世界情勢をテーマにした講演。

僕は、今の時点で自分が天下国家を論じるつもりはないし、今後もそういう道を歩む予定も全くないが、天下国家を語る本を読むのは好きです。
なぜなら、「人は立場によって言うことが違う」ということと、それゆえに「普遍的に正しいことなどない」ということを最もリアルに教えてくれるから。
それぞれ国の代表にはそれぞれの国家を背負う責任があり、国際問題というのは、そうした各国の利害と国際社会の大義名分の折り合いをどうつけるかが問題なのだと思います。
強い国もあれば弱い国もあり、民主主義もあれば独裁主義もあり、キリスト教があればイスラム教もあり、何か唯一正しい答えがあるわけではなく、皆それぞれの立場で正しいと信じることを主張する。
この本は、欧米的な考え方でも、先進国的な考え方でもない、マレーシアというアジアの小国からみた世界の断面。
であるがゆえに、これまでと違った「ものの見方」を教えてくれます。

そして僕は、「みんな違うのだ」ということに寛容になれるというか、それを腹の底から理解した上で、正解を探すのではなく、認識の違いを認め合える交差点を探すことができるようになりたいのです。
いろんな立場の人が天下国家を論じる本は、"You are wrong"ではなく、"We are different"だということを、わかり易く思い出させてくれるから好きなのです。

そういうことがわかったという意味でも、ドイツにいた一年半は貴重でした。

They perched in silence for a long time.
"How can we be so different and feel so much alike?" mused Flitter.
"How can we feel so different and be so much alike?" wondered Pip.
l think this is quite a mystery.
��映画「I am Sam」より)



��以下備忘録)

権力を持った富める国は、相手国の行政組織や政治形態などをすべて調べ上げ、服従工作をします。動員されたメディアは、経済や政治に悪影響を与える様々な報道で、相手を不利な立場に追い込んでいきます。こうした常套手段でどれだけ屈服させても、彼らは満足することを知りません。

マレーシアのような小国は為替の売買ごときで一夜にして国全体の経済を破壊されてしまう、という事実に私は驚愕しました。

戦後の日本が自らの力で経済を再建して、奇跡を達成したことに異論をさしはさむ人はいないはずです。いったい、どうしてそんなことができたのでしょうか。それは日本が、他人のアドバイス抜きで、自分たちのやり方で目的を達成したからなのです。

たしかに欧州は、何千マイルも離れたアジアの国々を屈服し、植民地化しました。これに対して中国は歴史上、領土を拡大したことはありません。世界の中心にあるという衒いこそあれ、他国を植民地化したことはないのです。いまさら、これまでのやり方を変えるとも思えません。

中国が東南アジア諸国を貧しくすることはないでしょう。貧しくなれば、私たちは彼らの商品を買えなくなる。中国にとって、彼らのマーケットとなる国々の生き残りと繁栄を保証することは避けられないはずです。

安価な中国製品が市場にあふれれば、一方で多くのバイヤーはブランド品を求めて伝統的なサプライヤーのもとに走るはずです。それが東南アジアなり、日本なり、韓国の生き残りにつながるのです。

中国に完全な民主主義などないと批判する向きがありますが、民主主義のおかげで何百万人もの死を招くくらいなら、むしろそれはゆっくり導入すべきです。欧米は、一朝一夕にできることのように民主主義を押し付けようとする。しかし重要なのは、システムではなく結果です。

イスラム世界の方が、キリスト教社会よりもユダヤ人に寛容だったのです。

イスラエルとパレスチナの紛争は宗教紛争であると間違って理解されてきましたが、本質は領土をめぐる対立なのです。

キリスト教とイスラム教は歴史上、宗教的に対立してきたかのように思われています。もちろん、多少は宗教上の問題もありますが、基本的には領土をめぐる争いなのです。

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