Chagall / Russian Avant-Garde


東京藝術大学美術館で開催中の「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展を観に行ってきました。

僕は、マティスやシャガールのような色彩やかでエネルギッシュな画家が大好きです。
昨年コートダジュールに旅行した時には、ニースにあるマティス美術館、シャガール美術館両方を訪れましたし、今年の年初にカンボジアに旅行した時には、シャガールに似た色彩だからと現地アーティストの絵を買ったりもしました。
原色を使って力強く書かれた絵を見ると、気分が明るくなるし、エネルギーをもらえる気がします。
しかし、この展覧会に行ったことでシャガールの印象は大きく変わりました。変わったというよりは、新たな一面を教えてもらったという感じかもしれませんが。

僕が学んだのは、彼の絵には、ユダヤ人として生まれたことの辛苦、二度の大戦と革命による苦難と絶望、それでも消えることのない故郷ロシアへの想いが随所に散りばめられていたということ。
シャガールは、帝政ロシア時代に現在のベラルーシに生まれたユダヤ人。
1887年生まれの彼は、第一次世界大戦、ロシア革命、第二次世界大戦の戦渦に巻き込まれ、ロシア、フランス、アメリカと転々としながら画家としての活動を続け、晩年は南フランスのヴァンスで最期を迎えます。

ロシアの教会、ロバや鳥などの故郷の動物たち、イディッシュ語(ユダヤ語)にちなんだ絵画表現などは、あらゆる作品に頻繁に登場します。
シャガールの絵によくみられる屋根の上のヴァイオリン弾きというのも、「不安定な場所でのヴァイオリン弾き」を、常に迫害の危険にさらされながらも日々楽しく生きようとするユダヤ人の現実逃避と重ね合わせているそうです。
そういうことを理解してシャガールの絵を見ると、一見理解しづらい彼の作品も、実は彼の記憶を呼び覚ましながらそれぞれのモチーフが描かれていたのだ、彼は一枚の絵に歴史を描いていたのだ、と思うに至りました。

今回の展示作品は、戦時中、戦後すぐの作品が多く、一方で僕がニースで観た作品は晩年のもの。
シャガールが生きてきた時代と重ね合わせると、単に色彩豊かでエネルギッシュ、ではなく、それぞれの時代と当時の想いを反映したモチーフ、色づかい、筆致なのだと思い知らされました。

圧巻は歌劇「魔笛」の舞台美術作品の展示。
圧倒的なスケール、圧倒的なパワー。
歌劇場の写真、しかも白黒を見るだけで鳥肌がたつほど驚嘆。
歴史を生きてきたと同時に、たとえそうでなくてもシャガールはとんでもない天才なのだと実感。
これから何をどんなに勉強してもこんな作品が描けるようになるとは全く思えないのです。
モーツァルトのオペラ「魔笛」を観たことはありませんが、これを機にぜひ観てみたいと思います。

まだ観ていない方は是非。
10月11日まで東京、10月23日から福岡です。
http://marc-chagall.jp/

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