Not Really 'Made in China'

IMG_18458.jpg

必読記事です。

Not Really 'Made in China' - The iPhone's Complex Supply Chain Highlights Problems With Trade Statistics

上記はWall Street Journalが書いたiphoneについての記事です。以下、非常にざっくりと要約します。

iphoneは米国で設計され、日本や韓国、ドイツの部品を買って、中国で組み立てられて、出荷されています。
一般的には、iphoneが売れることは、米国に利益をもたらし、生産国である中国に利益をもたらす一方で、日本では日系携帯電話メーカーの売上減少に繋がるなど、マイナスのインパクトとして取り上げられがちです。
しかし記事では、iphoneの生産における付加価値を分解すると、日本34%、ドイツ17% 、韓国13%、米国6%、中国3.6%となっており、iphoneが世界中で売れれば売れるほど日本が(部品供給を通じて)最も儲かっていることを指摘しています。

以前このブログでも書いたことがあると思いますが、僕は日本の製造業の生き残りモデルはまさにこういうことだと思ってます。
付加価値を持つ製造業はたくさんあるので、最終製品にこだわらず、日本に求められる付加価値に専念するべきだと思うのです。

��なお、記事自体の主旨は、貿易統計がこうしたサプライチェーンを把握してないため、中国に対して過剰に貿易慣行の是正を求めるのは間違いとしたものです。)

続きを読む »

蒼井優

最近邦画をよく観るようになりました。

ひとむかしは、邦画を観る人というのはごく一部で、5年くらい前までは僕もほとんど観たことがなかったのですが、今では映画の興行収入ランキングでも邦画のほうが多くトップテンにランクインしていたりしますよね。
5年くらい前といえば、韓国映画がヒットしていた頃で、「韓国は自国の映画が人気なのに、日本はハリウッドが人気で、邦画はなにやってんだ」みたいな論調がメディアで喧伝されていたのを覚えてます。
その後の邦画の躍進は、同じ日本人として嬉しい限りです。

前置きが長くなりましたが、実は僕、「蒼井優」という才能にベタ惚れなのです。

はじめて観た彼女の映画は、フラガールでした。フラガール自体非常に評価された映画でしたが、これを観た当時の蒼井優の印象は、日本的な女性の美しさ、(悪い意味でなく)田舎の素朴さを持ち合わせている女優だな、というくらいでした。

フラガール メモリアルBOX [DVD]フラガール メモリアルBOX [DVD]
(2007/03/16)
松雪泰子、豊川悦司 他

商品詳細を見る

次に観たのは「花とアリス」という作品。ドイツに住んでた頃に向こうで観ました。
この作品での蒼井優は、やはり自然体の演技が魅力で、オーディションか何かで踊っているシーンが映像として本当に美しくて、今でも目を瞑れば思い浮かぶくらいですが、全体としては「フラガール」と同じような印象でした。

花とアリス 通常版 [DVD]花とアリス 通常版 [DVD]
(2004/10/08)
鈴木杏、蒼井優 他

商品詳細を見る

僕が蒼井優の女優としての力量に感動したのは、つい最近観た「変身」という映画。
原作は東野圭吾の小説ですが、映画としては正直ひどいデキだと思います。
が、そんなどうしようもない映画でも、蒼井優の演技だけは異次元。
結構つらい役なのですが、彼女の演技は圧倒的にリアリティがあって、そこだけ感情移入できる。
ストーリーがつまらなくても、個人の演技力だけで観客の感情に入り込んでいく、そんな芸当ができる俳優がいることに僕は驚き、そして感動しました。

変身 [DVD]変身 [DVD]
(2009/01/28)
玉木宏、蒼井優 他

商品詳細を見る

そんな彼女の演技をもっと観てみたいと思って先週借りたのが「ハチミツとクローバー」。
僕は原作のコミックを読んだことがないので、コミックの人物を再現できているかはわかりませんが、原作を読んだことがある妻は「実際いたらこんな子だと思う」と言ってたので、原作の世界観を演じきってるのでしょう。
創作に入るときの顔つきや筆使い、全体で醸しだされる雰囲気は、天才芸術家という役割を見事に演じていたと思います。

ハチミツとクローバー ~恋に落ちた瞬間~ [DVD]ハチミツとクローバー ~恋に落ちた瞬間~ [DVD]
(2006/07/14)
櫻井翔、伊勢谷友介 他

商品詳細を見る

というわけで蒼井優という日本が誇るべき才能を応援してます。
最近やってた「雷桜」は映画館では見逃してしまいましたが、DVDになったらぜひ観たいと思います。

ちなみに、上の4作品を映画としておすすめするなら、「花とアリス」「フラガール」「ハチミツとクローバー」「変身」の順ですかね。。

続きを読む »

飛び続けることから始めよう

IMG_9595.jpg

昨日、日本航空の更正計画が東京地裁に認可されたとの発表がありました。

エアラインビジネスというのは、そもそも極めてボラティリティの高い、すなわち、安定的に利益を出すことが難しいビジネスです。
それは、テロや感染症、リーマンショックのような、一企業ではコントロールできない事件によって旅客数が減少し、売上が減ってしまうことも一因ですが、僕自身は、むしろ、エアラインビジネスというものが、そういったトップラインのリスクに対して柔軟に対応できるコスト構造を「極めて作りづらい」ビジネスモデルだからだと考えてます。
具体的には以下の3点です。

①稼働率ビジネス
まず、当たり前ですが、エアラインは、ホテルや鉄道などと同様、稼働率ビジネスです。
お客さんの増減に関わらず飛ばないといけないし、飛ぶとなれば機材費や燃料費、パイロットやCAの人件費など、ケータリングを除けばほとんどの費用が固定費で、客数に応じて減らすことができません。
固定費比率が高いので、当然ボラティリティは高くなります。

②コストの半分が燃油
エアラインの損益計算書を見ればわかるとおり、どのエアラインもコストのほぼ半分は燃油費です。
半分が燃油費であるということは、①で述べた固定費が大きいということだけではありません。
燃油は、商品相場の中でも(政治的要素を含め)極めて上下変動の大きい商品です。2002年頃は1バレル30米ドル程度のものが、2008年には200米ドルまで上昇し、金融危機後には1バレル40米ドル程度まで下がり、また上昇、というめまぐるしい動きをしています。
すなわち、コストの半分が、いきなり数倍に膨れ上がったりするリスクを抱えているということです。

また、①で述べたフライト連動の固定費の中でも、燃油はひときわ異なる性格を持っています。
それは、人や機材と違い、燃油は「距離」に連動するということです。
つまり、長距離を飛ばせば飛ばすほどリスクは高くなります。国際線、特に欧米向けの長距離国際線に路線をたくさん持つことは、それだけリスクが高いということです。

最新機材の導入や燃油価格のヘッジなど、燃油費に対する打ち手がないわけではないですが、上記のような性格から、そんな努力をも一気にふきとばすほどのリスクを同時に抱えているのです。

③インフラビジネス
上記①②に対して手を打てない最大の理由がこれ。
これはインフラ企業の宿命で、飛行機も、他の交通機関も、客が少ないから今回はやめます、というわけにはいかないということです。

以上のことから、僕は、エアラインというのは、ビジネスモデルの性格としてきわめて収益リスクが大きいビジネスだと思ってます。
当然ですが、上記の要素は決して日本航空に限った話ではなく、世界中でエアラインの経営危機はあまた起こっていて、アメリカではもはやビッグニュースにもならないような状況です。

僕は、今回の日本航空の再建は、親方日の丸体質、既得権益への甘え、高給と厚い福利厚生などといった、いわゆる経営体質の改善はもちろん必要だとは思いますが、そこだけにスポットライトをあててほしくない、それだけに終始してほしくないなと思ってます。
あたりまえの企業があたりまえにやっていることをやれるようにするのはもちろん大切ですが、僕は、日本航空は、それだけではなく、もっと崇高な使命のもとに集まる組織であってほしいと思ってます。

上述のとおり、エアラインというのは極めて舵取りが難しいビジネスです。
一方で、日本国内をつなぎ、日本と世界をつなぐインフラという、なくてはならないビジネスです。
ぜひ、「飛び続けること」を使命にしてもらいたい。
「飛び続ける」ためには、経営危機に陥ってはならないし、そのためには少しでもコストは下げないといけないし、もっと柔軟性のあるビジネスモデルを模索しないといけません。
日本航空が、人を減らす痛みを伴ってまで会社を変えようとしているのは、単に「利益を出す」ためではなく、「(利益を出すことで)飛び続ける」ため、日本と世界をつなぎつづけるためであり、そういう使命感を共有できる組織に生まれ変わることが、今回の再生の鍵なのだと思ってます。

言うまでもなく、それが日本航空の原点であり、アイデンティティでもあるからです。

続きを読む »

写真家たちの日本紀行

IMG_18293.jpg

BSジャパンで毎週土曜19:30-20:00に放送されている「写真家たちの日本紀行」という番組をご存知でしょうか。
http://www.bs-j.co.jp/shashinka/

プロの写真家の方が、日本を旅しながら「未来に残したい情景」をカメラにおさめる紀行番組なのですが、この番組、すばらしいです。
写真のクオリティが高いのはもちろんですが、何と言っても、プロの写真家が、普通の人が行くような普通の観光地で、どんなものに着目し、どんな形で情景を切り取るか、映像だとその思考プロセスがすごくわかりやすく伝わってきます。

先週の放送では、江口愼一氏が日光を訪れ、東照宮などの観光名所にも足を運んだわけですが、一般人が写真を撮るスポットとプロが写真を撮るスポットが明らかに違う。
画面の切り取り方、光の取り込み方、どこをどう歩いて、どこでカメラを構えるかを見るだけでもすごく勉強になります。

この番組、キヤノンがスポンサーなのですが、僕自身キヤノンのカメラを使っているので、使われている機材やレンズを知るのも勉強になります。
このカメラとこのレンズの組み合わせでこんな写真が撮れるとは、といった驚きが満載。
おかげで最近また写欲が湧いてきました。

何かすっかり番組の宣伝のようになってしまいましたが、最近欠かさず観てる(録画してる)番組の1つでした。
年末には特番もやるみたいで、今から楽しみです。
続きを読む »

小江戸川越

IMG_18276.jpg

都心から1時間強、鎌倉、日光と並んで歴史的建造物で有名な川越に行ってきました。
��と言っても、川越がそんな街だとは1ヶ月くらい前までは知りませんでした...)

歴史的な街並はたしかに壮観なのですが、残念なのは絶え間なく自動車が走るせいで、落ち着いて街並を楽しむことができないこと。
明らかに景観ともマッチしておらず、市街地に歴史地区が残っているので交通の便を考えると難しい問題であるにせよ、何らかの工夫はしてほしいなと思います。
その点、菓子屋横丁のあたりはヒューマンスケールに設計されていて、見所満載でした。

IMG_18273.jpg

次は鎌倉に行きたいですね。

続きを読む »

Omotesando Hills Christmas 2010 with SWAROVSKI ELEMENTS

IMG_18236.jpg


IMG_18229.jpg

気づいたら、街はすっかりクリスマスですね。
今年のクリスマスはゆっくりと過ごせそうです。

続きを読む »

欧州の歴史に学ぶ

何度か登場してますが、最近歴史マンガにハマってます。

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)
(2004/10/22)
岩明 均

商品詳細を見る



チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)
(2006/10/23)
惣領 冬実

商品詳細を見る

「ヒストリエ」は古代オリエント、「チェーザレ」はルネサンス期と時代は違いますが、どちらも欧州が舞台。

前の会社も今の会社もそうですが、僕が勤めているのは、いわゆる「欧州系」の企業です。
今の会社では聞かれることはないですが、前の会社では、よく「欧州系と米系はどう違うのか」とクライアントやら学生さんやらに聞かれたものです。
欧州系でも米系でも働いているのは日本人が多いので、実際のところはそれほど大きな差はないように思いますが、僕が答えてたのは以下の3つです。

①多様性
アメリカは1つの国、欧州はたくさんの国の集まり。
たくさんの国の集まりである欧州は、国によって民族も違えば、言語も違うし、文化、生活習慣も違う。
今はEUで統合されていると思う人もいるかもしれませんが、実際住んでみた人にはわかるとおり、国が変わると全てが変わると言っていいほどいろいろ違います。
日本企業なんかでたまに「欧州戦略」なんて言い方を耳にしますが、国によって攻め方が違うことへの認識が甘いままに欧州を一括りに考えるとなかなかうまくいきません。
欧州企業にはドイツ人、イギリス人、フランス人、イタリア人など様々な国籍の人が一緒に働いていて、「いろんな考え方、働き方があるよね」というのを肌で理解して生きてきたのが欧州。
アメリカも人種のるつぼとか言いますが、欧州と比べれば"This is America"的な1つの価値観でお互いを理解しやすいのかもしれません。

②時間軸
アメリカは短期的、欧州は長期的。
アメリカは株式市場至上主義なので、トップマネジメントも四半期ごとに評価されるため、短期的な業績の上下に目を向けがち。
一方の欧州、実はそもそも上場企業自体が少なくて、家族経営のプライベート企業が多いんです。
そのため株式市場の影響がアメリカほどではなく、比較的長期的に物事の考えることができます。
イタリアのアパレルブランドなんかでよく見られるような、中世の頃から続いていて、今もブランドの価値を守りつつ、家族経営を続けている、というような会社が生き残れるのも欧州ならではでしょうか。
この違いがどこから来てるのかというと、結局は欧州とアメリカでは歴史の長さが違いでしょうか。長い歴史を持つぶん、欧州のほうが長い時間軸で物事を考えるのかもしれません。

③ライフサイクル
人にたとえれば、アメリカは壮年、欧州は老人。
②とも少しかぶりますが、欧州の歴史は長く、一時は世界の覇権をとり世界中に植民地を作り、そして二度の大戦を経て覇権をアメリカに奪われたという歴史があります。
旅行してみるだけでもわかるとおり、アジアはエネルギーあふれ、成長著しい、いわば若者。
アメリカは、元気がなくなったとはいえ今でも世界最大の大国、人生でいうと壮年期。
それに対して欧州は明らかに老人。
おそらく50年後も街の風景はほとんど変わらないだろうと思わされるし、人々の考え方もいい意味でも悪い意味でも「成熟」しています。
労働生産性が高く、短い労働時間で日本企業と競り合えるのも長い歴史の中での改善と優先順位付けが一段進んでいるからのような気がしますし、規制なんかを含むEUの政策を見てても、大欧州として世界にうってでるよりは、アジアや米国の企業に欧州企業が脅かされないよう「域内」経済を守る、ということに主眼が置かれているように感じます。
国家がますます成熟すると社会構造がどう変わるか、この点は日本も欧州から学ぶことが多そうです。

すっかり話がそれたのですが、欧州の歴史は多様な国家、民族による闘争の歴史であり、国家や民族の衝突と分裂、融合の繰り返しです。
その歴史は複雑であり、人はどうあるべきか、社会とはなにか、などなどへの示唆が満載。
なかでも上記2つのマンガは、文句なしにおすすめです。
歴史好きならそれだけでおもしろいでしょうし、そうでなくても、欧州の歴史が持つ壮大な人間ドラマにわくわくすることと思います。
唯一の難点は…どちらもなかなか新刊が出ないことですかね。

続きを読む »

写真を学ぶ

IMG_18187.jpg

今日は新宿御苑に紅葉を観にいきました。
ドイツに住んでた頃はよく日本を懐かしく思いましたが、その時に脳裏に写る日本の風景の1つが紅葉だったのです。
なので、期待してでかけたのですが…ちょっと早かったようです。もう11月下旬なのにね。

前の会社の社長と食事をしていた時の話。
社長と僕はどちらも大のつくカメラ好きなので、食事をするといつもあのレンズはどうだとか、どのカメラがほしいとか、そういう話になります。
先日、写真の腕がなかなか上がらないので、写真教室に通ってしっかり学んでみようかと思っている、いう話をしたときのこと。
社長は少し首をかしげた後、こう仰いました。

「うーん…そうかなあ。写真教室に行くべきなのかなぁ。。
僕はね、写真の腕を上げたかったら、万葉集を詠むほうがいいと思うよ」

こういう含蓄のあるアドバイスをくれる、大人であり、深みがあり、人間として尊敬できる方でした。


「めづらしと我が思ふ君は、秋山の初黄葉に、似てこそありけれ」
��長忌寸娘ー万葉集第八巻)
続きを読む »

13日間で「名文」を書けるようになる方法


13日間で「名文」を書けるようになる方法13日間で「名文」を書けるようになる方法
(2009/09/04)
高橋 源一郎

商品詳細を見る

最近ブログを更新するようになったのは、仕事が変わって時間ができたというのもありますが、むしろこの本の影響のほうが大きいかもしれません。
作家であり、明治学院大学教授であり、僕には競馬好きとしてもおなじみの高橋源一郎氏が、明治学院大学で行っている「言語表現法講義」という授業をまとめた一冊。
タイトルからは、テクニック本のような印象を受けますが、実際の中身は、古今東西の高橋氏が好きな文章を紹介しながら、文章とは何か、言葉とは何かを学生と一緒に深く考える内容。

僕は1日1講義を寝る前に読んでいたのですが。。講義を読み進めながら(講義自体もすごくおもしろい!)、著者と学生と一緒になって文章について考える時間は、気づくと毎晩の楽しみの1つになっていました。
そして、テクニックは何も身につきませんが、とにかく文章を書きたくなるのです。
まさに名講義。この授業を生で受けられる学生さんがすごくうらやましい。

個人的に特に好きだったのが、ジブリのアニメにもなった「ゲド戦記」の原作者である、アーシュラ・クローバー・ル=グィンという作家による「左利きの卒業式祝辞」。
言葉を話すということ、書くということ、伝えるということについて、じっくり考え、好きになれる、ずっと手元に残しておきたい本です。

��以下備忘録)
わたしは、「文章」というものは、「赤の他人」に読んでもらうために存在していると考えています。そんなことは当たり前でしょうか?しかし、わたしの考えでは、実際はそうなっていないのです。「文章」というものは、どこかの「赤の他人」に伝える、というよりは、「なんとなくわかりあえる仲間」に向けて書かれる場合が多いのです。

わたしたちは、わたしたちの「人生」を長い、と感じます。退屈だ、と感じます。そして、なにか面白いことは起こらないかと呟くのです。だから、「人生」そのものであるような、うんざりするほど「長い」、単調な「小説」や「文章」なんかまっぴらだと思うでしょう。

「自己紹介」とは、それを読んでくれた人が、そのことによって、そのことをきっかけとして、もっとその人間のことを知りたいと思うような、なにか、のことです。

いまFさんは、その、たったひとつの「断片」を、確かめながら、ゆっくりと、それを書いた「わたし」の「全体」について想像してくれました。いまのFさんの話し方は、まるでワインが注がれたグラスを傾けながら、目を閉じ、その印象についてゆっくりと語るソムリエのようでしたね。(中略)つまり、そこで「仕事」をしているのは、誰よりも、つまり作者よりも、読者の方なのです。

なにかを見たら、そのままにしておいてはいけません。たぶん、あなたたちは、すぐに忘れてしまうからです。なにかと比べてみてください。あるいは、結びつけてみてください。

面白いのは、時には、「効率的」なことばより、そうでないことばの方が、ずっと遠くまで届いてしまうことなのです。

「ラヴレター」は、たったひとりの「読者」を想定し、その「読者」に向かって書かれます。わたしたちは、誰に向かって書かれたのかわからない「文章」より、自分だけに向かって書かれた「文章」を、自分にとって価値があるものと考えるでしょう?そして、あらゆる「文章」は、「読者」にとって、そのように思われるよう書かれるべきなのです。

わたしたちは、相手を「知らない」から「恋に落ち」、その結果、相手を知ろうとして、やがて、その「恋」を失うのです。

あることについて、更に詳しく知ろうとして、本を読んだり、インターネットで調べたり、それから、誰かの意見を聞いたりしていると、その結果として、もとのそのものから、目を離してしまうのです。

グレーゴルは、世界の無理解と引き替えに、世界を理解することができたのです。

「右利き」の人々は、自分たちが「右利き」であることに無関心だということです。もしかしたら、「右利き」であることに気づいてさえいないかもしれません。それが「多数派」であることの意味なのです。

続きを読む »