Not Really 'Made in China'

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必読記事です。

Not Really 'Made in China' - The iPhone's Complex Supply Chain Highlights Problems With Trade Statistics

上記はWall Street Journalが書いたiphoneについての記事です。以下、非常にざっくりと要約します。

iphoneは米国で設計され、日本や韓国、ドイツの部品を買って、中国で組み立てられて、出荷されています。
一般的には、iphoneが売れることは、米国に利益をもたらし、生産国である中国に利益をもたらす一方で、日本では日系携帯電話メーカーの売上減少に繋がるなど、マイナスのインパクトとして取り上げられがちです。
しかし記事では、iphoneの生産における付加価値を分解すると、日本34%、ドイツ17% 、韓国13%、米国6%、中国3.6%となっており、iphoneが世界中で売れれば売れるほど日本が(部品供給を通じて)最も儲かっていることを指摘しています。

以前このブログでも書いたことがあると思いますが、僕は日本の製造業の生き残りモデルはまさにこういうことだと思ってます。
付加価値を持つ製造業はたくさんあるので、最終製品にこだわらず、日本に求められる付加価値に専念するべきだと思うのです。

��なお、記事自体の主旨は、貿易統計がこうしたサプライチェーンを把握してないため、中国に対して過剰に貿易慣行の是正を求めるのは間違いとしたものです。)

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蒼井優

最近邦画をよく観るようになりました。

ひとむかしは、邦画を観る人というのはごく一部で、5年くらい前までは僕もほとんど観たことがなかったのですが、今では映画の興行収入ランキングでも邦画のほうが多くトップテンにランクインしていたりしますよね。
5年くらい前といえば、韓国映画がヒットしていた頃で、「韓国は自国の映画が人気なのに、日本はハリウッドが人気で、邦画はなにやってんだ」みたいな論調がメディアで喧伝されていたのを覚えてます。
その後の邦画の躍進は、同じ日本人として嬉しい限りです。

前置きが長くなりましたが、実は僕、「蒼井優」という才能にベタ惚れなのです。

はじめて観た彼女の映画は、フラガールでした。フラガール自体非常に評価された映画でしたが、これを観た当時の蒼井優の印象は、日本的な女性の美しさ、(悪い意味でなく)田舎の素朴さを持ち合わせている女優だな、というくらいでした。

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松雪泰子、豊川悦司 他

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次に観たのは「花とアリス」という作品。ドイツに住んでた頃に向こうで観ました。
この作品での蒼井優は、やはり自然体の演技が魅力で、オーディションか何かで踊っているシーンが映像として本当に美しくて、今でも目を瞑れば思い浮かぶくらいですが、全体としては「フラガール」と同じような印象でした。

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鈴木杏、蒼井優 他

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僕が蒼井優の女優としての力量に感動したのは、つい最近観た「変身」という映画。
原作は東野圭吾の小説ですが、映画としては正直ひどいデキだと思います。
が、そんなどうしようもない映画でも、蒼井優の演技だけは異次元。
結構つらい役なのですが、彼女の演技は圧倒的にリアリティがあって、そこだけ感情移入できる。
ストーリーがつまらなくても、個人の演技力だけで観客の感情に入り込んでいく、そんな芸当ができる俳優がいることに僕は驚き、そして感動しました。

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玉木宏、蒼井優 他

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そんな彼女の演技をもっと観てみたいと思って先週借りたのが「ハチミツとクローバー」。
僕は原作のコミックを読んだことがないので、コミックの人物を再現できているかはわかりませんが、原作を読んだことがある妻は「実際いたらこんな子だと思う」と言ってたので、原作の世界観を演じきってるのでしょう。
創作に入るときの顔つきや筆使い、全体で醸しだされる雰囲気は、天才芸術家という役割を見事に演じていたと思います。

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櫻井翔、伊勢谷友介 他

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というわけで蒼井優という日本が誇るべき才能を応援してます。
最近やってた「雷桜」は映画館では見逃してしまいましたが、DVDになったらぜひ観たいと思います。

ちなみに、上の4作品を映画としておすすめするなら、「花とアリス」「フラガール」「ハチミツとクローバー」「変身」の順ですかね。。

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飛び続けることから始めよう

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昨日、日本航空の更正計画が東京地裁に認可されたとの発表がありました。

エアラインビジネスというのは、そもそも極めてボラティリティの高い、すなわち、安定的に利益を出すことが難しいビジネスです。
それは、テロや感染症、リーマンショックのような、一企業ではコントロールできない事件によって旅客数が減少し、売上が減ってしまうことも一因ですが、僕自身は、むしろ、エアラインビジネスというものが、そういったトップラインのリスクに対して柔軟に対応できるコスト構造を「極めて作りづらい」ビジネスモデルだからだと考えてます。
具体的には以下の3点です。

①稼働率ビジネス
まず、当たり前ですが、エアラインは、ホテルや鉄道などと同様、稼働率ビジネスです。
お客さんの増減に関わらず飛ばないといけないし、飛ぶとなれば機材費や燃料費、パイロットやCAの人件費など、ケータリングを除けばほとんどの費用が固定費で、客数に応じて減らすことができません。
固定費比率が高いので、当然ボラティリティは高くなります。

②コストの半分が燃油
エアラインの損益計算書を見ればわかるとおり、どのエアラインもコストのほぼ半分は燃油費です。
半分が燃油費であるということは、①で述べた固定費が大きいということだけではありません。
燃油は、商品相場の中でも(政治的要素を含め)極めて上下変動の大きい商品です。2002年頃は1バレル30米ドル程度のものが、2008年には200米ドルまで上昇し、金融危機後には1バレル40米ドル程度まで下がり、また上昇、というめまぐるしい動きをしています。
すなわち、コストの半分が、いきなり数倍に膨れ上がったりするリスクを抱えているということです。

また、①で述べたフライト連動の固定費の中でも、燃油はひときわ異なる性格を持っています。
それは、人や機材と違い、燃油は「距離」に連動するということです。
つまり、長距離を飛ばせば飛ばすほどリスクは高くなります。国際線、特に欧米向けの長距離国際線に路線をたくさん持つことは、それだけリスクが高いということです。

最新機材の導入や燃油価格のヘッジなど、燃油費に対する打ち手がないわけではないですが、上記のような性格から、そんな努力をも一気にふきとばすほどのリスクを同時に抱えているのです。

③インフラビジネス
上記①②に対して手を打てない最大の理由がこれ。
これはインフラ企業の宿命で、飛行機も、他の交通機関も、客が少ないから今回はやめます、というわけにはいかないということです。

以上のことから、僕は、エアラインというのは、ビジネスモデルの性格としてきわめて収益リスクが大きいビジネスだと思ってます。
当然ですが、上記の要素は決して日本航空に限った話ではなく、世界中でエアラインの経営危機はあまた起こっていて、アメリカではもはやビッグニュースにもならないような状況です。

僕は、今回の日本航空の再建は、親方日の丸体質、既得権益への甘え、高給と厚い福利厚生などといった、いわゆる経営体質の改善はもちろん必要だとは思いますが、そこだけにスポットライトをあててほしくない、それだけに終始してほしくないなと思ってます。
あたりまえの企業があたりまえにやっていることをやれるようにするのはもちろん大切ですが、僕は、日本航空は、それだけではなく、もっと崇高な使命のもとに集まる組織であってほしいと思ってます。

上述のとおり、エアラインというのは極めて舵取りが難しいビジネスです。
一方で、日本国内をつなぎ、日本と世界をつなぐインフラという、なくてはならないビジネスです。
ぜひ、「飛び続けること」を使命にしてもらいたい。
「飛び続ける」ためには、経営危機に陥ってはならないし、そのためには少しでもコストは下げないといけないし、もっと柔軟性のあるビジネスモデルを模索しないといけません。
日本航空が、人を減らす痛みを伴ってまで会社を変えようとしているのは、単に「利益を出す」ためではなく、「(利益を出すことで)飛び続ける」ため、日本と世界をつなぎつづけるためであり、そういう使命感を共有できる組織に生まれ変わることが、今回の再生の鍵なのだと思ってます。

言うまでもなく、それが日本航空の原点であり、アイデンティティでもあるからです。

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写真家たちの日本紀行

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BSジャパンで毎週土曜19:30-20:00に放送されている「写真家たちの日本紀行」という番組をご存知でしょうか。
http://www.bs-j.co.jp/shashinka/

プロの写真家の方が、日本を旅しながら「未来に残したい情景」をカメラにおさめる紀行番組なのですが、この番組、すばらしいです。
写真のクオリティが高いのはもちろんですが、何と言っても、プロの写真家が、普通の人が行くような普通の観光地で、どんなものに着目し、どんな形で情景を切り取るか、映像だとその思考プロセスがすごくわかりやすく伝わってきます。

先週の放送では、江口愼一氏が日光を訪れ、東照宮などの観光名所にも足を運んだわけですが、一般人が写真を撮るスポットとプロが写真を撮るスポットが明らかに違う。
画面の切り取り方、光の取り込み方、どこをどう歩いて、どこでカメラを構えるかを見るだけでもすごく勉強になります。

この番組、キヤノンがスポンサーなのですが、僕自身キヤノンのカメラを使っているので、使われている機材やレンズを知るのも勉強になります。
このカメラとこのレンズの組み合わせでこんな写真が撮れるとは、といった驚きが満載。
おかげで最近また写欲が湧いてきました。

何かすっかり番組の宣伝のようになってしまいましたが、最近欠かさず観てる(録画してる)番組の1つでした。
年末には特番もやるみたいで、今から楽しみです。
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小江戸川越

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都心から1時間強、鎌倉、日光と並んで歴史的建造物で有名な川越に行ってきました。
��と言っても、川越がそんな街だとは1ヶ月くらい前までは知りませんでした...)

歴史的な街並はたしかに壮観なのですが、残念なのは絶え間なく自動車が走るせいで、落ち着いて街並を楽しむことができないこと。
明らかに景観ともマッチしておらず、市街地に歴史地区が残っているので交通の便を考えると難しい問題であるにせよ、何らかの工夫はしてほしいなと思います。
その点、菓子屋横丁のあたりはヒューマンスケールに設計されていて、見所満載でした。

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次は鎌倉に行きたいですね。

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Omotesando Hills Christmas 2010 with SWAROVSKI ELEMENTS

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気づいたら、街はすっかりクリスマスですね。
今年のクリスマスはゆっくりと過ごせそうです。

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欧州の歴史に学ぶ

何度か登場してますが、最近歴史マンガにハマってます。

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)
(2004/10/22)
岩明 均

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チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)
(2006/10/23)
惣領 冬実

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「ヒストリエ」は古代オリエント、「チェーザレ」はルネサンス期と時代は違いますが、どちらも欧州が舞台。

前の会社も今の会社もそうですが、僕が勤めているのは、いわゆる「欧州系」の企業です。
今の会社では聞かれることはないですが、前の会社では、よく「欧州系と米系はどう違うのか」とクライアントやら学生さんやらに聞かれたものです。
欧州系でも米系でも働いているのは日本人が多いので、実際のところはそれほど大きな差はないように思いますが、僕が答えてたのは以下の3つです。

①多様性
アメリカは1つの国、欧州はたくさんの国の集まり。
たくさんの国の集まりである欧州は、国によって民族も違えば、言語も違うし、文化、生活習慣も違う。
今はEUで統合されていると思う人もいるかもしれませんが、実際住んでみた人にはわかるとおり、国が変わると全てが変わると言っていいほどいろいろ違います。
日本企業なんかでたまに「欧州戦略」なんて言い方を耳にしますが、国によって攻め方が違うことへの認識が甘いままに欧州を一括りに考えるとなかなかうまくいきません。
欧州企業にはドイツ人、イギリス人、フランス人、イタリア人など様々な国籍の人が一緒に働いていて、「いろんな考え方、働き方があるよね」というのを肌で理解して生きてきたのが欧州。
アメリカも人種のるつぼとか言いますが、欧州と比べれば"This is America"的な1つの価値観でお互いを理解しやすいのかもしれません。

②時間軸
アメリカは短期的、欧州は長期的。
アメリカは株式市場至上主義なので、トップマネジメントも四半期ごとに評価されるため、短期的な業績の上下に目を向けがち。
一方の欧州、実はそもそも上場企業自体が少なくて、家族経営のプライベート企業が多いんです。
そのため株式市場の影響がアメリカほどではなく、比較的長期的に物事の考えることができます。
イタリアのアパレルブランドなんかでよく見られるような、中世の頃から続いていて、今もブランドの価値を守りつつ、家族経営を続けている、というような会社が生き残れるのも欧州ならではでしょうか。
この違いがどこから来てるのかというと、結局は欧州とアメリカでは歴史の長さが違いでしょうか。長い歴史を持つぶん、欧州のほうが長い時間軸で物事を考えるのかもしれません。

③ライフサイクル
人にたとえれば、アメリカは壮年、欧州は老人。
②とも少しかぶりますが、欧州の歴史は長く、一時は世界の覇権をとり世界中に植民地を作り、そして二度の大戦を経て覇権をアメリカに奪われたという歴史があります。
旅行してみるだけでもわかるとおり、アジアはエネルギーあふれ、成長著しい、いわば若者。
アメリカは、元気がなくなったとはいえ今でも世界最大の大国、人生でいうと壮年期。
それに対して欧州は明らかに老人。
おそらく50年後も街の風景はほとんど変わらないだろうと思わされるし、人々の考え方もいい意味でも悪い意味でも「成熟」しています。
労働生産性が高く、短い労働時間で日本企業と競り合えるのも長い歴史の中での改善と優先順位付けが一段進んでいるからのような気がしますし、規制なんかを含むEUの政策を見てても、大欧州として世界にうってでるよりは、アジアや米国の企業に欧州企業が脅かされないよう「域内」経済を守る、ということに主眼が置かれているように感じます。
国家がますます成熟すると社会構造がどう変わるか、この点は日本も欧州から学ぶことが多そうです。

すっかり話がそれたのですが、欧州の歴史は多様な国家、民族による闘争の歴史であり、国家や民族の衝突と分裂、融合の繰り返しです。
その歴史は複雑であり、人はどうあるべきか、社会とはなにか、などなどへの示唆が満載。
なかでも上記2つのマンガは、文句なしにおすすめです。
歴史好きならそれだけでおもしろいでしょうし、そうでなくても、欧州の歴史が持つ壮大な人間ドラマにわくわくすることと思います。
唯一の難点は…どちらもなかなか新刊が出ないことですかね。

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写真を学ぶ

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今日は新宿御苑に紅葉を観にいきました。
ドイツに住んでた頃はよく日本を懐かしく思いましたが、その時に脳裏に写る日本の風景の1つが紅葉だったのです。
なので、期待してでかけたのですが…ちょっと早かったようです。もう11月下旬なのにね。

前の会社の社長と食事をしていた時の話。
社長と僕はどちらも大のつくカメラ好きなので、食事をするといつもあのレンズはどうだとか、どのカメラがほしいとか、そういう話になります。
先日、写真の腕がなかなか上がらないので、写真教室に通ってしっかり学んでみようかと思っている、いう話をしたときのこと。
社長は少し首をかしげた後、こう仰いました。

「うーん…そうかなあ。写真教室に行くべきなのかなぁ。。
僕はね、写真の腕を上げたかったら、万葉集を詠むほうがいいと思うよ」

こういう含蓄のあるアドバイスをくれる、大人であり、深みがあり、人間として尊敬できる方でした。


「めづらしと我が思ふ君は、秋山の初黄葉に、似てこそありけれ」
��長忌寸娘ー万葉集第八巻)
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13日間で「名文」を書けるようになる方法


13日間で「名文」を書けるようになる方法13日間で「名文」を書けるようになる方法
(2009/09/04)
高橋 源一郎

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最近ブログを更新するようになったのは、仕事が変わって時間ができたというのもありますが、むしろこの本の影響のほうが大きいかもしれません。
作家であり、明治学院大学教授であり、僕には競馬好きとしてもおなじみの高橋源一郎氏が、明治学院大学で行っている「言語表現法講義」という授業をまとめた一冊。
タイトルからは、テクニック本のような印象を受けますが、実際の中身は、古今東西の高橋氏が好きな文章を紹介しながら、文章とは何か、言葉とは何かを学生と一緒に深く考える内容。

僕は1日1講義を寝る前に読んでいたのですが。。講義を読み進めながら(講義自体もすごくおもしろい!)、著者と学生と一緒になって文章について考える時間は、気づくと毎晩の楽しみの1つになっていました。
そして、テクニックは何も身につきませんが、とにかく文章を書きたくなるのです。
まさに名講義。この授業を生で受けられる学生さんがすごくうらやましい。

個人的に特に好きだったのが、ジブリのアニメにもなった「ゲド戦記」の原作者である、アーシュラ・クローバー・ル=グィンという作家による「左利きの卒業式祝辞」。
言葉を話すということ、書くということ、伝えるということについて、じっくり考え、好きになれる、ずっと手元に残しておきたい本です。

��以下備忘録)
わたしは、「文章」というものは、「赤の他人」に読んでもらうために存在していると考えています。そんなことは当たり前でしょうか?しかし、わたしの考えでは、実際はそうなっていないのです。「文章」というものは、どこかの「赤の他人」に伝える、というよりは、「なんとなくわかりあえる仲間」に向けて書かれる場合が多いのです。

わたしたちは、わたしたちの「人生」を長い、と感じます。退屈だ、と感じます。そして、なにか面白いことは起こらないかと呟くのです。だから、「人生」そのものであるような、うんざりするほど「長い」、単調な「小説」や「文章」なんかまっぴらだと思うでしょう。

「自己紹介」とは、それを読んでくれた人が、そのことによって、そのことをきっかけとして、もっとその人間のことを知りたいと思うような、なにか、のことです。

いまFさんは、その、たったひとつの「断片」を、確かめながら、ゆっくりと、それを書いた「わたし」の「全体」について想像してくれました。いまのFさんの話し方は、まるでワインが注がれたグラスを傾けながら、目を閉じ、その印象についてゆっくりと語るソムリエのようでしたね。(中略)つまり、そこで「仕事」をしているのは、誰よりも、つまり作者よりも、読者の方なのです。

なにかを見たら、そのままにしておいてはいけません。たぶん、あなたたちは、すぐに忘れてしまうからです。なにかと比べてみてください。あるいは、結びつけてみてください。

面白いのは、時には、「効率的」なことばより、そうでないことばの方が、ずっと遠くまで届いてしまうことなのです。

「ラヴレター」は、たったひとりの「読者」を想定し、その「読者」に向かって書かれます。わたしたちは、誰に向かって書かれたのかわからない「文章」より、自分だけに向かって書かれた「文章」を、自分にとって価値があるものと考えるでしょう?そして、あらゆる「文章」は、「読者」にとって、そのように思われるよう書かれるべきなのです。

わたしたちは、相手を「知らない」から「恋に落ち」、その結果、相手を知ろうとして、やがて、その「恋」を失うのです。

あることについて、更に詳しく知ろうとして、本を読んだり、インターネットで調べたり、それから、誰かの意見を聞いたりしていると、その結果として、もとのそのものから、目を離してしまうのです。

グレーゴルは、世界の無理解と引き替えに、世界を理解することができたのです。

「右利き」の人々は、自分たちが「右利き」であることに無関心だということです。もしかしたら、「右利き」であることに気づいてさえいないかもしれません。それが「多数派」であることの意味なのです。

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「魂の昭和史」と「永遠の0」


すべての日本人に感じてほしい魂の昭和史 (小学館文庫)すべての日本人に感じてほしい魂の昭和史 (小学館文庫)
(2002/07)
福田 和也

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永遠の0 (講談社文庫)永遠の0 (講談社文庫)
(2009/07/15)
百田 尚樹

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「もともと生まれた場所も肌の色も言語すらも異なるこの世界で、自分達以外の人間、宗教を排除しようというのが間違っている。混在したこの世界こそが神が我らに与えた世界なのに。人の心などもとから型にはまるはずもないだろうに‥」
とは、先日のブログに書いた通り惣領冬実の漫画「チェーザレ 破壊の創造者」第3巻でのチェーザレの台詞ですが、僕はこの言葉にひどく共感しています。
世の中には、人の数だけ正義があって、いわゆる現在まかり通っている「正義」というのは、単にこの世界の強者にとっての「正義」でしかない、ということを、なんとなくですが理解できるようになってきました。

高校の部活とか、大学のサークルとか、会社なんかもそうですよね。勝ち残った者にとっての「正義」がその組織の価値観になる。
途中で辞めたりした人が何を思ってたかなんてほとんど気にしないし、新しく入る人にも同じ価値観を持つよう洗脳していく。
僕は高校時代テニス部でしたが、地方都市の伝統ある公立高校のテニス部というのはものすごく体育会系で、精神論全盛かつヒエラルキーに厳しく、高校1年の1年間は球拾いをするばかりでラケットを握らせてもらえませんでしたし、学校内はもちろん、町中で先輩に会っても大声で挨拶をするよう指導させられていました。
僕は単純というか、自分の軸も持っていなかったので、「高校の部活とはこういうものなのか」と思ったし、「途中で辞めるのは逃げること」というような風潮もあったりで、結果的に3年間続けましたが、今思うとこのやり方って1つの方法論ではあっても、「唯一の正義」ではないですよね。

会社なんかも、マネジメントや古株にとって居心地がいい価値観が「正義」になってて、中途で入ってきた人がうまく馴染めなかったり、異質なものを排除したり、ということはどこの組織でもあると思います。
それ以外でも、資本主義vs社会主義、キリスト教vsイスラム教、結果重視vsプロセス重視、同じような話はそれこそいくらでもあります。
結局いろんなところでいろんな正義が戦って、勝ち残った1つの正義が、その時代、その組織・集団の価値観となって、そこで勝ち残れなかった無数の正義が語られることはないし、時には悪徳、穢れとして扱われるのです。
さらに、勝ち残った正義は、その価値観でもって、歴史をも書き換えたり、解釈を変えたりする。

なので、何かについて考えるときは、僕は自分の価値観にはめこむのではなく、相手の価値観を通して考えようと試みるようになりました。
これがなかなか難しくて、あまり程度がすぎると自分の軸足がぶれたり、物事に意見をできないくらい頭がこんがらかってしまうのですが。。最近はそれを楽しんでます。

すっかり前置きが長くなってしまいましたが。
日本の「昭和史」というのは、まさに戦前の価値観が戦後の価値観で塗り替えられた時代。
ともすれば我々は、戦後の価値観で戦前、または戦時中の日本を評してしまいがちですが、それは強者の論理。
戦前、戦時中の正義と価値観とはどんなものだったのか、それを戦後の価値観を頭から捨てて理解しようとすることは、日本という国と日本人を知る上での大きなポイントになるし、そこに共感できないまでも理解が進めることが、チェーザレの言う「混沌の世界で生きる」1つの道しるべとなるのではないかと思ってます。

「すべての日本人に感じてほしい魂の昭和史」「永遠の0」は、どちらも戦前、戦時中の日本人が何を考え、どういう思いで戦争を進めていったかが、現代の文脈からは語られない角度から描かれています。
読めば読むほど自分がいかに自分の文脈で物事を見ていたか思い知らされます。

自分の生きている世界と全く違う世界に思考を広げていくことが今の僕には必要です。
昭和史も、もう何冊かは読みたいと思ってます。

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パレード


パレード (幻冬舎文庫)パレード (幻冬舎文庫)
(2004/04)
吉田 修一

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パレード (初回限定生産) [DVD]パレード (初回限定生産) [DVD]
(2010/10/06)
藤原竜也香里奈

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「パレード」を読み終えた時の率直な感想は、「怖い」というものでした。
ただ、「何が怖いの?」とか「どう怖いの?」とか聞かれると、うまく説明がつかず、僕はしばらくなぜ「パレード」が怖いのかを考え込んでいました。

はじめは、「こんな世界があったら怖いな」という意味での怖さ、つまり、物語の登場人物が持つ異質な世界観が怖いのではないかと考えましたが、どうも腑に落ちない。
というのは、僕が感じた「怖さ」というのは、ホラーやSFのような、現実にはありえない世界について話すときの「怖さ」とは明らかに異質のものなのです。
もっと日常の中で、普段は気づいていなかったり、見えなかったりするけど、実はそうだった、という類いの、物事の本質をえぐり出されたような、そんな「怖さ」だと思うのです。
では、「パレード」がえぐり出した本質とは何なのか。

それはまさに、この物語が、少し異質な空間という体裁をとっていながらも、最後に表出する「距離感」だったり「無関心」だったりという人間の本性が、実際の現実世界と「実は何ら違いがない」ということなのではないかと思います。
例えば、他愛のない会話をしたり、時には醤油の貸し借りができるような間柄の隣人がいたとして。
仮にその隣人が何か犯罪を犯していたとして、そのことを何らかの形で知ったり疑ったりしたとしても、僕は「知らないふりをしていつも通りに接する可能性はあるな」と思うのです。
それは決して、隣人に「無関心」だからではなく、「変な事件に巻き込まれたくない」「自分の平和な日常を壊したくない」という意識によるもの。
また、例えば会社で、自分の隣の席の同僚が仕事がうまくいかなくて悩んでいたとして。
軽い悩みであれば、いろいろ話をしたり、気分転換に飲みに行ったりするかもしれません。
ただ、既に心が折れていたり、精神状態に異常をきたすほど病んでいたりした場合はどうかと言われれば、僕は「声をかけずに放っておく可能性はあるな」と思うのです。
これもやはり、「無関心」だからではなく、「自分にできることないしな」というような意識によるものからではないでしょうか。

つまり「パレード」は、人間は本質的に、たとえそれが隣人であろうと同僚であろうと「見て見ぬフリをする」ことができるということ、そして"ほんの少し"舞台を特殊な状況に設定することで、それがいかに残酷であるかを、鮮明にあぶり出していて、それを見せつけられたことで僕は「怖いな」と感じたのだと思います。
ネットワークビジネスにハマった友人について「アイツとはもう関わらないほうがいいよね」と話したり、宗教にハマった友人と徐々に連絡をとらないようにしたり、この種の人間の「防衛本能」は実はそこかしこにあふれています。
「人間って実はけっこう冷たいよね」というメッセージを、「冷たくもやさしくもなれるぎりぎりの関係」を舞台にして書くことで、これ以上ない衝撃をもってつきつけられたような気がします。
そういう意味で極めて秀逸な小説。

小説を読んだ後映画を観たのですが、映画を見て、↑で書いた「冷たくもやさしくもなれるぎりぎりの関係」ってところが随所で演出されていたのだな、とあらためて感じました。
何度か手を差し伸べようとしてるもんね、実は。

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L'homme est un roseau pensant

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人間はひとくきの葦にすぎない。
自然の中で最も弱いものである。
だが、それは考える葦である。

彼を圧しつぶすために、宇宙全体が武装するには及ばない。
蒸気や一滴の水でも、彼を殺すには十分である。
だが、たとえ宇宙が彼を圧しつぶしても、人間は彼を殺すものより尊いだろう。
なぜなら、彼は自分が死ぬことと、宇宙の自分に対する優勢とを知っているからである。
宇宙は何も知らない。

だから、我々の尊厳のすべては、考えることの中にある。
我々はそこから立ち上がらなければならないのであって、我々が満たすことのできない空間や時間からではない。
だから、よく考えることに努めよう。
ここに道徳の原理がある。

ー「パンセ」断章347/ブレーズ・パスカル

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今日はスカイツリーを撮りにいきました。

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Hope

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「メンタルはどうやって鍛えているのですか」
「メンタルにトレーニングはないんだ ー メンタルは今もいいよ。希望をたくさん持っているから」
ーラファエル・ナダル

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混沌

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「もともと生まれた場所も肌の色も言語すらも異なるこの世界で、自分達以外の人間、宗教を排除しようというのが間違っている。混在したこの世界こそが神が我らに与えた世界なのに。人の心などもとから型にはまるはずもないだろうに‥」
ー「チェーザレ 破壊の創造者」第3巻 / 惣領冬実

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Montegrappa Emblema

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妻から転職のお祝いをいただきました。
モンテグラッパの「エンブレマ」と呼ばれる万年筆です。

2006年だから、もう4年以上前になりますが、前職で一人前と認められるポジションに昇進した時のことです。
そのことを父親に話すと、「万年筆をプレゼントしよう」と嬉しいことを言ってくれました。
「ただ、おまえは高価なものをほしがるからな。ちょっとお金を貯めてからな」と父。
当時の僕は、そんな高価なものでなくても、父が選んでくれるものであればそれでいいのに、という思いと、父はもしかすると、息子の昇進祝いに高価なものをプレゼントする、というイベントを楽しみたいのかもしれない(父は「モノより心を大事にしなさい」が口癖)、という思いが交錯し、万年筆が手元に来るその日をまあ気長に待つことにしました。

あれから4年半。
父が当時の約束を覚えているのかどうかもはや定かではありませんが、その間にも、僕が欲しい万年筆のイメージはどんどん具体的に固まっていきました。
僕は、普段は仕事のメモや考え事の殴り書きくらいでしかペンを使わないので、万年筆を使うのはよりフォーマルだったり、記念に残るシチュエーションの時。
なので、機能性はもちろんですが、そこで求められる機能性は耐久性とか長時間書いても疲れないなどではなく、ここぞという場面を演出できる書き味の気持ち良さがほしい。
加えて、機能だけではなく、存在そのものに華がある万年筆がいい、と思うようになりました。

「機能性と感性の両立」といえば、やはりイタリア製(感性が強すぎるきらいはありますが)。
なかでもモンテグラッパは、その繊細かつ華やかなデザインにずっと惹かれていました。

妻と一緒にお店をまわり、2人とも気に入ったのがこの「エンブレマ」。
��年半の時を経て、父から妻へとバトンが継がれ、僕はついに万年筆を手に入れました。

立派な万年筆を本当にありがとう。大切に使います。

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Best associates

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この1ヶ月、本当に多くの方に退職のお祝いをして頂きました。
以下は、その備忘録として。こんなに食べ歩いた1ヶ月はなかったと思うので。

9/6 (月):Yさん(上司)@魚のほね(恵比寿)
9/7 (火):Kさん(上司)@鮨なかむら(六本木)
9/8 (水) : Sさん(元上司。現再生ファンド)@鬼わそと(白金高輪)
9/9 (木) : Nくん(元同僚。現米系コンサルティングファーム)@一炉一会(麻布十番)
9/10(金): Eさん(元同僚。現米系人材紹介会社)@すし匠まさ(西麻布)
9/13(月)ランチ : Kさん(元上司。現米系コンサルティングファーム)@オークドア(グランドハイアット東京)
9/13(月)ディナー : Hさん(元同僚。現ベンチャー系PR会社)@福皆来(恵比寿)
9/14(火): Kさん(上司、メンター)@まえだや(中目黒)
9/17(金): Sくん(大学時代の親友)ほか@やきやき三輪(広尾)
��9/18-9/22: 石垣島旅行)
9/24(金)ランチ:Kさん(元上司。現欧州系プライベートエクイティ)@Union Square Tokyo (六本木)
9/24(金)ディナー:会社の若手、アルムナイ総勢20名強@yakata cafe (西麻布)
9/26 (日)ディナー:妻の手料理@自宅
9/27(月): Tさん(元上司。現起業して経営者)@かんだ(六本木)
9/28(火): 会社同期4人@菊乃井(赤坂)
9/29(水): Mさん(社長)@四川(シェラトン都ホテル東京)

写真は会社の最終出社日を終えて帰宅したときに玄関で待ち構えていたお祝いバルーン。妻からのプレゼントです。
みなさま、本当にありがとうございました!

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Toray Pan Pacific Tennis Tournament

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残念ながら負けてしまいましたが、クルム伊達公子さんの応援に有明に行ってきました。

思えば高校でテニスを始めたとき、最初に買ったのは当時伊達さんが使っていたRD-8というラケット。
伊達さんが得意だったドライブボレーによくトライしたのを覚えてます。

生で本人を見たのも試合を観たのも初めてでした。
世界トッププレイヤーのスキアボーネと比べても技術的には全く遜色なく、体力があればきっと…と思わずにはいられないテニスをできるのは想像を絶する努力の蓄積のたまもの。

目線の高さ、目指す世界をどこまで高く持てるか。
ルーティンに流されることなく挑戦していかなければいけません。

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Chagall / Russian Avant-Garde


東京藝術大学美術館で開催中の「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展を観に行ってきました。

僕は、マティスやシャガールのような色彩やかでエネルギッシュな画家が大好きです。
昨年コートダジュールに旅行した時には、ニースにあるマティス美術館、シャガール美術館両方を訪れましたし、今年の年初にカンボジアに旅行した時には、シャガールに似た色彩だからと現地アーティストの絵を買ったりもしました。
原色を使って力強く書かれた絵を見ると、気分が明るくなるし、エネルギーをもらえる気がします。
しかし、この展覧会に行ったことでシャガールの印象は大きく変わりました。変わったというよりは、新たな一面を教えてもらったという感じかもしれませんが。

僕が学んだのは、彼の絵には、ユダヤ人として生まれたことの辛苦、二度の大戦と革命による苦難と絶望、それでも消えることのない故郷ロシアへの想いが随所に散りばめられていたということ。
シャガールは、帝政ロシア時代に現在のベラルーシに生まれたユダヤ人。
1887年生まれの彼は、第一次世界大戦、ロシア革命、第二次世界大戦の戦渦に巻き込まれ、ロシア、フランス、アメリカと転々としながら画家としての活動を続け、晩年は南フランスのヴァンスで最期を迎えます。

ロシアの教会、ロバや鳥などの故郷の動物たち、イディッシュ語(ユダヤ語)にちなんだ絵画表現などは、あらゆる作品に頻繁に登場します。
シャガールの絵によくみられる屋根の上のヴァイオリン弾きというのも、「不安定な場所でのヴァイオリン弾き」を、常に迫害の危険にさらされながらも日々楽しく生きようとするユダヤ人の現実逃避と重ね合わせているそうです。
そういうことを理解してシャガールの絵を見ると、一見理解しづらい彼の作品も、実は彼の記憶を呼び覚ましながらそれぞれのモチーフが描かれていたのだ、彼は一枚の絵に歴史を描いていたのだ、と思うに至りました。

今回の展示作品は、戦時中、戦後すぐの作品が多く、一方で僕がニースで観た作品は晩年のもの。
シャガールが生きてきた時代と重ね合わせると、単に色彩豊かでエネルギッシュ、ではなく、それぞれの時代と当時の想いを反映したモチーフ、色づかい、筆致なのだと思い知らされました。

圧巻は歌劇「魔笛」の舞台美術作品の展示。
圧倒的なスケール、圧倒的なパワー。
歌劇場の写真、しかも白黒を見るだけで鳥肌がたつほど驚嘆。
歴史を生きてきたと同時に、たとえそうでなくてもシャガールはとんでもない天才なのだと実感。
これから何をどんなに勉強してもこんな作品が描けるようになるとは全く思えないのです。
モーツァルトのオペラ「魔笛」を観たことはありませんが、これを機にぜひ観てみたいと思います。

まだ観ていない方は是非。
10月11日まで東京、10月23日から福岡です。
http://marc-chagall.jp/

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大井川鉄道と寸又峡

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日帰り旅行ということで、大井川鉄道に乗って寸又峡に行ってきました。

朝9時に家を出て、品川駅からこだまで静岡の掛川まで。掛川から東海道線に乗り換えて、金谷で下車。
金谷から千頭という駅まで走っているのが静岡県を南北に走る大井川鉄道で、この路線ではなんとSLに乗れるんです(平日は一日一本限定)。
朝9時に家を出たのもまさにこのため。11:48金谷発のSLに乗車。

写真のとおり、SLは昭和初期当時の車両が再現されていて、なんともノスタルジックな雰囲気。
僕はSLに乗ったのは初めてではないだろうか。少なくとも記憶にはないのだけど。。
アンティークな車両、汽笛の音、もくもくと流れる煙…五感で旅情を盛り上げてくれます。
線路は大井川に沿って北上するのですが、窓を流れる景色がまた綺麗で、はしゃいでいる間に終点の千頭駅へ。
ここから先はバスで寸又峡温泉に向かいます。

寸又峡温泉には、夢の吊橋というなんともフォトジェニックな場所があって、こここそが今回の旅の目的地。
南アルプスの大自然に囲まれた山間に、エメラルドグリーンに輝く大間ダム湖があり、そこに女性がお祈りをすると恋の願いが叶う吊橋がかかっている、というなんともロマンチックな場所。
まあ恋の願いどうこうはあまり興味がないし、平日で曇り空だったせいか観光に来ているのもご高齢の方々ばかりだったので、そのへんのロマンは皆無でしたが、そのぶん静かで神秘的な雰囲気でした。

約1時間ちょっとの滞在で、温泉にも入らず帰りのバスに乗り込み、同じルートを逆走。
今度はSLではなくワンマン列車に揺られながら、静岡駅からひかりに乗り、品川には20時前後に到着。

楽しい日帰り旅行でした。
しかし、静岡県って本当にお茶を作りまくってるのね。。

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20km Cycling -鬼子母神-

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今日から転職前の有休消化期間。
とはいっても、ちょこちょこ仕事が残っていたり、夜は毎日転職の挨拶がらみの会食だったりで、けっこう予定は盛りだくさんです。
ただ、昼間は比較的時間があるので、まずはサイクリングへ。
今回の目的地は、映画「今度は愛妻家」のロケ地の1つでもある、雑司ヶ谷の鬼子母神。

我が家のある港区からは、片道約10kmなので、往復20km。
途中江戸川公園にも寄り道したりしながら、のんびりと雑司ヶ谷へ。
お決まりの都電荒川線の写真を撮って、ここから鬼子母神までは歩いて向かいます。

鬼子母神は安産、子育の神様らしく、境内には安産祈願の絵馬がたくさん。
��月に長男が生まれたばかりの妹に子育のお守りを買って、映画のシーンをまねたような写真を撮ったりして、大満足。

東京はまだまだ見どころがたくさんありそうです。

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New horizon

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9月末で今の会社を卒業することにしました。

新卒で入社して7年半、うちドイツ駐在が1年半。
振り返ってみても、本当にいいキャリア、いい20代の過ごし方をしたと感じます。

ビジネスのいろは、その根幹である経営について徹底的に学べたこと。
強くプロフェッショナルとして生きていく心構えを身につけられたこと。
初めて参画した海外プロジェクトでは、英語がわからないストレスで仕事から逃げ回ってたのに、今では自ら海外でのキャリアを目指せるようになったこと。
生涯に亘ってお互いに切磋琢磨し、尊敬しあえる上司や同僚に恵まれたこと。
親子ほどの年齢差がある僕を一人のビジネスパーソンとして認めてくれるクライアントに出逢えたこと。
その他、数え切れないほどのものを僕はこの仕事を通じて手にすることができました。

10月からは新しいフィールドで新しい挑戦。
仕事ができないかもしれない、という不安はありません。ただし、自分が自分に期待するスピードで成長できるかが心配。
ようやく見つけたキャリアビジョンを見失わないためにも、密度の濃い30代にしたいと思います。

以下は、7年半前に僕を採用してくれた今の会社の現会長(当時社長)に挨拶に行ったときに頂いた言葉。

「年齢的にもいい決断です。あなたが思っている以上に事業会社はどろどろしています。グローバルとかかっこいいこと言っても、事業会社というのはコンサルと比べるとはるかに泥臭いところです。ストレスもたまるし、進まないことも多いでしょう。ただ、それを学んできてください。会社なんてなかなか変わりません。決してあせらずに。とにかくあせらずに。
そういうことを学んで、一回り大きくなって、また戻っておいで。我々はいつでもWelcomeなので。その日を楽しみに待ってます。今までおつかれさま。ありがとう。」

7年半、本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。

2010年9月

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父と

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この週末は福岡から父が遊びにきてました。
土曜はランチにくろさわで黒豚カレー南蛮うどん、六本木ヒルズ散策、ミッドタウンで写真展とBACARDIモヒート、夜は麻布十番まつりでおつまみを買って妻の両親が遊びに来てくれての宴会。大盛り上がり。
日曜は午前中に八芳園(=写真)まで散歩、帰ってそうめんを食べてその後買い物して芝浦ふ頭から海を眺めて解散。

にぎやかで楽しかったです。
父の写真を撮りましたが、いい顔してました。
よく歩くし、よく笑うし、やたら汗臭いしですが、いつまでも元気で。
お母さんと仲良くね。

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40km Cycling -調布-

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休み初日のお台場サイクリングから中2日。
水曜、木曜は雨が降ったり、微妙に仕事が入って時間がとれなかったりでしたが、今日金曜日は第二弾にふさわしい天気。

前回(10kmコース)をクリアしたので、せっかく天気がいいなら(20kmコース)に挑戦です。
調布か三鷹か迷いましたが、そもそもジブリ美術館のチケットもなかったので、調布に決定。
とはいえ。。地図を見ると、恐ろしく遠いですね。調布。

まずはお中元を買うために自転車で新宿伊勢丹へ。
おかげで少し遠回りですが。。新宿までは30分かかったかかからないかくらい。軽いもんだ。
無事にお中元を手配して、いよいよ出発。

新宿から調布へは、とにかく甲州街道をまっすぐ走り続けるだけ。
景色としてはいまいちですが、本当に調布までいけるか自信がなかったので、まっすぐなのはありがたいです。

初台、幡ヶ谷、笹塚、明大前、下高井戸、、と京王線の駅に沿って走り続けます。
単調な道で、若干気が滅入りますが、調布を示す道路標識が目に入るようになると少し元気に。
途中、買い物帰りのおばちゃんにも抜かれるくらいスピードが落ちてましたが、新宿から約1時間で調布に到着。
そんなにアップダウンのある道ではなかったし、やってみれば、意外と簡単なもんです。

調布に着くと、観光案内所のような所があったので、そこで近隣の地図をもらってそこからは徒歩で。
噂の天神通り商店街。けっこうな観光客が‥と思いきや、そんな人は皆無。
地元の人が普通に買い物してる中で一眼レフを構え、写真を撮るのは少し恥ずかしい気分ですが、せっかくここまで来たのだからと記念写真。
ねずみ男、いい顔してるねー。

調布まで来た証拠もかねて、奥さんにゲゲゲの鬼太郎グッズのおみやげを買って、さあ帰途へ。
帰りは新宿による必要はないので、世田谷区を対角線につっきって、池尻大橋、恵比寿を通って無事到着。
ろくに道も知らないのに迷うこともなく遠回りすることもなく帰って来れてよかったです。
帰りは1時間半くらいかな?そう考えるとマラソン選手にも全然かなわないですが。。

これで20kmコースもクリア。往復40kmと思えばなかなか充実感あります。
次はいよいよ30kmコースに挑戦?

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20km Cycling -お台場-

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お休み初日。
天気は心配だけど、とにかく雨は降ってないので、やる気のあるうちに。

まずは、自分がどれだけできるのかもわからないので、(10kmコース)からお台場を選択。
お台場は、レインボーブリッジを渡れればわずか5-6kmなのですが、残念ながらレインボーブリッジは自転車で渡れないらしいので、晴海経由で向かいます。このコースで片道10km、往復20km。

家を出て、田町駅の脇を通り、海岸沿いへ。
インターコンチネンタルホテル東京ベイのあたりからレインボーブリッジとお台場を海の向こうに眺める。
ちょこちょこ自転車を止めて写真を撮るのも楽しい。休日っぽくていい。

海岸沿いを浜離宮に沿って走りながら、ここはむかし妻と歩いたな、とか思い出しながら気分よく走り、築地市場へ。
僕は築地市場は初めて(といっても別に中を見学したわけではないけど)でしたが、ここは楽しそうです。
おいしそうなにおいがあちこちからするし、市場独特の活気があって。奥さん今度遊びに行こうね。

築地市場を抜けると晴海通りを右折、あとは晴海通りを走り、勝どきを抜け、晴海を抜け、晴海大橋を渡ると有明です。
晴海までは快調だったのですが、晴海大橋の上り坂で一気に体力を奪われました。
それまではあまり感じませんでしたが、カメラ、替えのレンズ、なぜか本なんかも入ってる背中のバッグが、ものすごく重たく感じ始めます。
なんでこんなに詰め込んだのか。肩が痛い。。

晴海大橋を渡ったあとは、有明テニスの森を通って、あとはお台場に向かうだけなのですが、このあたり、景色が単調で、体力も落ちてることもあって、なかなかペースがあがらず。。
お台場海浜公園に着いたのは、家を出て1時間弱。疲れた。。

久しぶりの運動のせいか、とにかく疲れて、写真どころではないです。
まわりは子供連れのママや修学旅行の高校生や旅行中のカップル、中国人団体などが楽しそうにしてるなかで、僕は汗だくでぐったり。
コーラを飲んだりラーメンを食べたりしながらかれこれ1時間くらい休憩して、ようやく撮った写真が↑。
やる気ない。。

疲労困憊で、ちゃんと帰れるかなと心配になりましたが、意外と帰りは楽でした。
晴海大橋だけです。難関は。

ともあれ、10kmコースお台場編を無事クリア。
さあ次は…どこにしましょうか。

それにしても、なんでお台場に自由の女神がいるの?
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Cycling

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正月以来、久々の休暇です。
今回の休暇は、とにかく運動不足とそれによる肥満をなんとかしないといけない、というのがテーマ。
ジムで運動とか、はやりのジョギングとか、いろいろ方法はありますが、運動を目的に運動するのはどうも気乗りしません。
そこで、思いついたのが、都内からそれなりの距離で、写真を撮るのが楽しそうな場所に自転車で行くこと。
これなら運動もできるし、行く先々でおもしろい写真が撮れるかもしれません。

自転車でいけそうな距離って、どれくらいでしょうね。
そういえば高校生の頃に、実家から太宰府天満宮まで自転車で行ったことがあります。
調べてみると、だいたい片道30kmくらい。
これくらいはいけるのかなぁ。。いやいや、当時とは体力が違いすぎます。
重たいカメラバッグもしょっていくわけだし。。
というわけで、まずは片道10km、20kmくらいで探してみました。

��10kmコース)
お台場:若者のデートスポット。海浜公園からレインボーブリッジ、タワーを望む写真はベタだけど悪くない
押上:東京スカイツリーが建設中。まだ見たことないし。。
羽田空港:仕事でよく行くけど、わざわざ飛行機を撮りに…(飛行機撮るなら北九州空港のほうが楽しいけど)

��20kmコース)
調布:「ゲゲゲの女房」で一躍脚光を浴びる街。天神通りには鬼太郎と仲間たちのモニュメントがあるらしい。
三鷹:ジブリの森美術館があって、実物大の巨神兵がいる。要チケット。
横浜:25kmなのでちょっと遠い。。けど海辺はきれい。

さあ、どこに行こうか…。ん!?今週ずっと雨?

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立ち上がれ日本人


立ち上がれ日本人 (新潮新書)立ち上がれ日本人 (新潮新書)
(2003/12)
マハティール モハマド

商品詳細を見る

マレーシアの元首相マハティール氏による、資本主義の欠点から中国とのつきあい方、イスラム世界、日本への叱咤激励まで多岐にわたる世界情勢をテーマにした講演。

僕は、今の時点で自分が天下国家を論じるつもりはないし、今後もそういう道を歩む予定も全くないが、天下国家を語る本を読むのは好きです。
なぜなら、「人は立場によって言うことが違う」ということと、それゆえに「普遍的に正しいことなどない」ということを最もリアルに教えてくれるから。
それぞれ国の代表にはそれぞれの国家を背負う責任があり、国際問題というのは、そうした各国の利害と国際社会の大義名分の折り合いをどうつけるかが問題なのだと思います。
強い国もあれば弱い国もあり、民主主義もあれば独裁主義もあり、キリスト教があればイスラム教もあり、何か唯一正しい答えがあるわけではなく、皆それぞれの立場で正しいと信じることを主張する。
この本は、欧米的な考え方でも、先進国的な考え方でもない、マレーシアというアジアの小国からみた世界の断面。
であるがゆえに、これまでと違った「ものの見方」を教えてくれます。

そして僕は、「みんな違うのだ」ということに寛容になれるというか、それを腹の底から理解した上で、正解を探すのではなく、認識の違いを認め合える交差点を探すことができるようになりたいのです。
いろんな立場の人が天下国家を論じる本は、"You are wrong"ではなく、"We are different"だということを、わかり易く思い出させてくれるから好きなのです。

そういうことがわかったという意味でも、ドイツにいた一年半は貴重でした。

They perched in silence for a long time.
"How can we be so different and feel so much alike?" mused Flitter.
"How can we feel so different and be so much alike?" wondered Pip.
l think this is quite a mystery.
��映画「I am Sam」より)



��以下備忘録)

権力を持った富める国は、相手国の行政組織や政治形態などをすべて調べ上げ、服従工作をします。動員されたメディアは、経済や政治に悪影響を与える様々な報道で、相手を不利な立場に追い込んでいきます。こうした常套手段でどれだけ屈服させても、彼らは満足することを知りません。

マレーシアのような小国は為替の売買ごときで一夜にして国全体の経済を破壊されてしまう、という事実に私は驚愕しました。

戦後の日本が自らの力で経済を再建して、奇跡を達成したことに異論をさしはさむ人はいないはずです。いったい、どうしてそんなことができたのでしょうか。それは日本が、他人のアドバイス抜きで、自分たちのやり方で目的を達成したからなのです。

たしかに欧州は、何千マイルも離れたアジアの国々を屈服し、植民地化しました。これに対して中国は歴史上、領土を拡大したことはありません。世界の中心にあるという衒いこそあれ、他国を植民地化したことはないのです。いまさら、これまでのやり方を変えるとも思えません。

中国が東南アジア諸国を貧しくすることはないでしょう。貧しくなれば、私たちは彼らの商品を買えなくなる。中国にとって、彼らのマーケットとなる国々の生き残りと繁栄を保証することは避けられないはずです。

安価な中国製品が市場にあふれれば、一方で多くのバイヤーはブランド品を求めて伝統的なサプライヤーのもとに走るはずです。それが東南アジアなり、日本なり、韓国の生き残りにつながるのです。

中国に完全な民主主義などないと批判する向きがありますが、民主主義のおかげで何百万人もの死を招くくらいなら、むしろそれはゆっくり導入すべきです。欧米は、一朝一夕にできることのように民主主義を押し付けようとする。しかし重要なのは、システムではなく結果です。

イスラム世界の方が、キリスト教社会よりもユダヤ人に寛容だったのです。

イスラエルとパレスチナの紛争は宗教紛争であると間違って理解されてきましたが、本質は領土をめぐる対立なのです。

キリスト教とイスラム教は歴史上、宗教的に対立してきたかのように思われています。もちろん、多少は宗教上の問題もありますが、基本的には領土をめぐる争いなのです。

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William Eggleston

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御殿山にある原美術館にWilliam Egglestonの写真展を観にいってきました。

色彩表現といえば、僕はSteve McCurryが大好きです。
彼の写真は異国情緒と人間の交差点に焦点をあてていますが、William Egglestonが撮るのは、ゴミだったりポスターだったり、普通はカメラを向けないような被写体に焦点をあて、なんでもない被写体を構図と色彩表現でアートに昇華させていたのが印象的。

それに感化されて帰りに撮ったのが↓。
あまりイケてないけど。。こういう目で街歩きをすると、なんでも被写体にできて新鮮です。


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刺激になる写真展でした。
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今度は愛妻家

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映画「今度は愛妻家」
http://www.kondoha-aisaika.com/

先日機内で観ました。

20代後半くらいからか、突然涙もろくなりました。
スポーツを観たり、映画を観たりすると、ちょっとしたことで涙が出そうになるのです。
僕は、そのこと自体はすごくいいことだと思っていて、というのも、昔より人の気持ちがわかるようになったということのような気がするからです。

単純な僕は、映画を観て少し泣いて、ちゃんと愛妻家になろうと、そして、もっと妻の写真を撮ろうと思いました。

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Who are you, David Jones?

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出張で今度はブラジルのサンパウロに向かってます。
サンパウロへは、成田からアメリカのワシントンダレス空港を経由して合計22時間くらいのフライトです。

本来であればもうサンパウロに着いているはずなのですが、実はこの記事はワシントンダレス空港のラウンジから書いています。
というのも、昨夜21時半に予定していたサンパウロ行きのフライトが、2時間送れの23時半に変更になり、0時くらいにキャンセルが決定、翌日23日(=今日)出発に変更になったのです。
成田からワシントンに到着したのが16時なので、8時間待ってのキャンセル。
空港は代わりのホテルを手配してもらう人の行列でパニック。何も動けないまま時間は既に深夜1時。異国でこの状況はすごく疲れます。

深夜1時半くらいようやくホテルバウチャーをもらったのですが、今度はホテル行きのシャトルバスが来ません。
ようやく一台来たと思ったら、10人乗りくらいのスモールバン。疲れきっていらだっているアメリカ人が我先に乗り込み、あっという間に満席。
こんなことをやっていたら、また1時間くらい待たされて、ようやくバスに乗っても今度はホテルの受付で1時間待って…みたいな感じで、夜が明けてしまいそうです。

というわけで、ワシントン到着後のトランジットの合間に3-4時間ステイしていたダレス空港近くのハイアットに電話。
「3時間でチェックアウトをしたのだけど、フライトがキャンセルになってワシントンに泊まることになった。もともとは1日分払っていたし、同じ部屋を使わせてくれない?」と相談したところ、「もちろんだ。もともと今夜はあなたの部屋なのだから」との返事。
今回の出張で出会うアメリカ人はみんな陽気で親切。少し嬉しくなる。
シャトルバスを待つ行列に別れを告げ、タクシーを拾ってハイアットへ。ハイアットまではわずか5分の距離です。
ようやく休める、と安堵しましたが、ここまでならよくある苦労話。
この長い一日はまだまだ終わりませんでした。

ホテルに着くと、受付の男性が「待っていたよ」と満面の笑顔で、昼間に使っていた部屋の鍵をくれました。
エレベーターに乗り、7階に上がり、部屋に向かうと、なぜか部屋の中から物音と人の声が。
よく見るとドアには「Privacy」タグがつけられています。
変だなと思いながら、カードキーを挿すと、やっぱりドアは開きません。
なんだこりゃ、と思いながらもう一度フロントへ。

フロントで「誰かいたよ?」と話をすると、「そんなわけないだろう。お前の部屋だぞ」と先ほどの男性。
部屋に電話をしても誰も出ないから、空耳に違いない、カードキーは何かのエラーかもね、という話になり、今度はボディガードのような屈強なアメリカ人に連れられてまた7階へ。
屈強アメリカ人がマスターキーでドアを開けようとすると、またもエラーで開きません。
彼は不審な顔をしながらドアをゴンゴンとノック。しばらくは返事がありませんでしたが、再三のノックの末、中から返事が。「もう風呂入って寝るんだよ」みたいなことを言ってます。

屈強アメリカ人と、「やっぱ人がいるなぁ。違う部屋借りたら?」という話になり、またフロントへ。
いったいいつになったら寝れるのだろうか。。
フロントに戻って、屈強アメリカ人と人がいた話を受付にすると、さっきの男性に加えて別の女性も加わり、パソコンをいろいろと調べはじめました。
調べたあとに彼女の言った一言が衝撃的。

女性:「あなたの部屋には今David Jonesという人がいるわ。知り合い?」
僕:「いや…全く知らないよ」
女性:「そんなはずないわ。きっと彼はあなたとルームシェアをするつもりなのよ」
僕:「いや…だから知らない人だよ。ルームシェアの予定はないよ」
女性:「じゃあ部屋に電話してみましょう…うーん、何度電話しても彼は電話に出ないわ。しかたないから私が直接部屋に行って話をしてきます」

というわけで、今度は彼女と屈強アメリカ人が7階へ。
もうこれでは話がついたとしても、見ず知らずの、パイレーツオブカリビアンに出てくるモンスターのような名前のDavid Jonesが使った部屋には泊まる気がしないではないか。
疲れきったままフロントで待つこと5分、女性と屈強アメリカ人が戻ってきました。

女性:「今ここの前を誰か通った?」
受付男性:「誰も通らないよ」
女性:「変ね。部屋には誰もいなかったわ」
男性:「は?さっきは声がしたって言ってたじゃん」
女性:「そうなんだけど、今見に行ったらもう誰もいなかったの。一体どこにいったのかしら?」
屈強:「とにかく彼には違う部屋を用意してやれよ。気味が悪いぜ」
女性:「…そうね…彼には違う部屋を用意して、私たちはDavid Jonesの行方を追いましょう」

とにもかくにも2階の別の部屋をもらえたものの、気味が悪くてしょうがない。
不思議な不思議な、長い長い一夜はこうして幕を閉じたのでした。
その後David Jonesは見つかったのでしょうか。。

さあ、あと1時間でいよいよサンパウロ行きが出発です。
今度こそちゃんと飛びますように…。

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Moscow

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仕事でモスクワに行ってきました。

フランクフルト経由でモスクワに到着したのは現地時間の23時すぎ。
空港を出るとあたりは当然真っ暗で、気温は-15℃。
凍てつく寒さの中タクシー乗り場へ向かうものの、なんとタクシーがいない。
これは困った…とあたりを見渡していると、タクシーっぽい、というか白タクを発見。
とにかくホテルまで連れて行ってもらうことに。40分程度で4,000ルーブル(≒12,000円程度)。
あとでロシア人同僚に聞くと、通常は1,300ルーブルくらいだそうです。ロシアはもともと白タクが多く、事前交渉が必要なのだとか。
後にホテルでタクシーを呼んでもらったときなどは、白タクすら捕まらず、通りかかりのおそらく普通のおじさんをとめて、ボーイが金額を交渉。実際に目的地まで連れて行ってもらいましたが、なんとも信じられない思いでした。

それ以外にも、ロシアは、今まで訪れた国と比べてもいろんな意味で新鮮な国でした。

例えば、ロシア人同僚との会話には、「カザフスタン」「ベラルーシ」など、旧ソ連の国の名前が強い親近感とともに登場します。
今回食事に連れて行ってもらった先も、カザフスタン料理、グルジア料理、そしてアルメニア料理と、およそ日本やヨーロッパでは候補に挙がることのない国の料理。
ああ、ここはロシアなのだな、そして、かつてのソビエト連邦のつながり意識は今でも強いのだな、と実感。
そして、アルメニアコニャックは、これがなかなかおいしいことも体感。
今まであまり意識してこなかった旧ソ連の国々が、少し身近になったような気がします。

スーパーに行くと、日本で地ビールだとか各地の焼酎だとかがずらーっと棚を占めているのと同じように、この国ではすごい種類の地ウォッカが棚に並んでいることには驚きました。
「ロシアはウォッカ」とは聞いていたものの、こうやって実際に見ると感動します。

また、ロシア人から聞いた話で印象に残っているのは、ロシアの金融機関では、幹部社員になるのはほとんど女性だということ。
というのも、数字を几帳面に管理する能力は、明らかに男性より女性のほうが優れていて、男性だと「まあだいたいこれくらいでいいや」と思うことも女性はきちんとやるので、数字の管理能力が問われる金融機関の管理職には女性が昇進するらしいのです。
言われてみれば、女性のほうが細かいところまできちんと考える能力に長けているのは日本でも同じような気がします。
日本はまだ男性優位の社会構造が残ってますが、ロシアはそのへんが平等だということなのでしょうか。
非常に興味深い話です。

肝心の仕事のほうは、恐ろしく多忙な一週間でした。
それでも、わずかな合間を縫って一度行ってみたかった赤の広場へ。
クレムリンやレーニン像も立派でしたが、何より心を奪われたのは聖ワシリイ大聖堂(=写真)。
次回ロシアに来るときは、もう少しゆっくり時間をとって、クレムリンの中も散策してみたいものです。

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30

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もう昨日のことになりますが、誕生日をむかえ、30になりました。
写真はフラワーケーキ?とでも呼ぶのでしょうか、妻がプレゼントしてくれたものです(花なので、食べられません)。

30歳の誕生日はこれまでと違う気分なのか?と何人かに聞かれましたが、実はまだ30歳という実感がありません。
ただ、30歳というのがどういう年齢なのかを考えることはあります。
1つは、「若いのにがんばっててえらいね」「若いのにすごいね」と言われる年齢ではなくなったこと。
例えばクライアントに年齢を聞かれ、20代と答えていたときは、なんとなく上のような反応があって、悪い気はしなかったものですが、もうそんなこともなくなりそうだな、と思うと少しさびしい。
と同時に、これからは一人前の大人として扱われるのだ、もはや若さは言い訳にできない年齢になったのだ、と気持ちをあらたに一層がんばらなければならない、と思ったりもします。

30歳の時、僕の両親は何をしていたか。
父が30歳の時、僕は既に生まれていて、1歳でした。
さすがに1歳の頃の記憶はありませんが、写真で見る限り、今の僕と似たような大人加減の気がします。
まあ、既に子どもがいたわけだから、父のほうがだいぶ大人なのかもしれないけど。
その3年後、母が30歳の時、僕は4歳。幼稚園に入った頃です。
今僕に幼稚園児の子どもがいたら、と考えても、全く想像力が働きません。
当時の母は、30という節目に何を思ったのだろう?
子育てが忙しくて、それどころじゃなかったのだろうか。妹も生まれてたし。
何しろ親のことを考えても、30というのがどんな歳なのか、いまいちピンと来ないのです。

一方で、最近はおもしろい話があります。
というのも、僕と同年代の連中が、入社した会社で偉くなったり、起業したりで、「一緒に何かおもしろいことをやらないか?」という誘いをよく受けるのです。
いわゆる一般的な転職活動をしたりせずとも、こんな感じで次のキャリアを想像する機会が最近すごく多い。
少しずつだけど、僕らの世代が、会社の中軸になって物事を動かしたり、起業して新しい価値を提供したり、社会を動かしていく、変えていくことができるようになってきたのだと実感します。
そういう意味で、30というのは、社会から与えられるのではなく、社会を変えていくべく主体性をもう一段高め始める時期なのだ、そのように思うことはあります。
僕は社会に何を問うていくのか。

話は変わり、ここから先はただの自慢ですが、そんな30歳の記念に妻がプレゼントしてくれた手料理は、それはそれは最高でした。
中でも僕のお気に入りは、「ホタテとイカ、トマトのファルシ」。
最近のマイブームである、「細部の繊細さ」にあふれた一品でした。

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妻は、出会った当時から料理が上手でした。
しかし、僕が驚いているのは、「出会った後も、ものすごいペースで料理が上達しまくっている」ということです。
レパートリーはどんどん増えるし、味は繊細になるし、盛り付けに至っては昔の写真とは比べ物にならないほど。
ドイツでのつらい料理環境が彼女を育てたのでしょうか。とても幸せなことです。
そして、ますますの成長を期待せずにはいられません。

自慢ついでにもう1枚。↓は昨年のクリスマスディナーで登場した「バターライスと牛肉ステーキをstaubで」。
これも僕のお気に入り、三ツ星メニューの1つです。

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