オンリーワンは創意である

オンリーワンは創意である (文春新書)オンリーワンは創意である (文春新書)
(2008/09)
町田 勝彦

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液晶に経営資源を集中し、アクオスブランドでシャープを一躍トップブランドにした町田社長による変革の回顧録。

シャープはたしかに一流ブランドになったし、世界での知名度もぐんと上がったように思う。
液晶の次として取り組んでいる太陽光発電も、日本以上に欧州で存在感をアピールできるだろう。

本書でも書かれているが、シャープの成功は、液晶テレビのキーデバイスである液晶パネルを自社生産できた点にある。
逆にキーデバイスを持たなかったブラウン管では苦労の連続だったようだ。
「世界の中での日本」の戦い方の1つは、まさに、高い技術力を活かして次世代商品のキーデバイスをいち早く開発し、世界に供給するモデルだと思う。

その意味で、僕は、シャープが亀山をはじめ国内に工場を持ち、自らアセンブリーまで行って、最終製品である液晶テレビを販売する、というモデルにはいまひとつ賛成できない。
前にも述べたが、生産、特にアセンブリーに関しては、日本の付加価値は決して高くない。
シャープの場合は、テレビだけでなく白物も持っているので、自社ブランドのテレビに付加価値を持たせることが白物のブランド価値向上につながり、結果として会社全体の収益向上が期待できる、との見込みがあったのだろうとは思う。

しかし、キーデバイスである液晶パネルの段階が、この製品の付加価値としては最大で、組み立てや販売をシャープのみで行うことで、最終製品としての付加価値はどうしても落ちてしまう。
現に、収益面では厳しいものの、ソニーは液晶パネルを外部調達しながら液晶テレビの世界トップに躍り出た。
驚くほどのブランド力、販売力である。
シャープが自社ブランドに拘らず、ソニーに液晶パネルを提供していれば、結果的に世界中で売れるシャープの液晶パネルの量は格段に増えていたのではないか。
収益性としても、今以上に高くなっていたと思う。

もちろん、「自社ブランドのテレビを」という思いはよくわかるが、最終製品ブランドとして世界で戦える日本企業は、ソニーくらいのものだ。
日本全体を考えると、最終製品ブランドへの拘りを捨て、キーデバイス開発とその外販に「集中」していくことこそが、1つの道だと思う。


��以下、備忘録)
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2001年に生まれたアクオス一号機は、左右に大きな丸いスピーカーで、テレビは四角いものという、当時の常識を覆した個性的なデザインだった。しかし営業は、「こんなもの売れません」と苦い顔をし、アメリカのセールスマネージャーからは、「このデザインはテレビらしくない」と苦情が届いた。
しかし私はその形にこだわった。液晶モニターと区別するためには、中途半端なデザインでは、売り場で明確なメッセージを発信することができない。注目されなければ、名前とデザインを変えた意味がない。物議をかもすということは、それだけインパクトがある証拠なのだ。

ブランドを確立するための宣伝は、お客様の心に届くまで徹底して継続すること - これが私の持論である。

それまでシャープの製品は、ブランド力が低いが故に、たとえ機能性能が優れていても、トップブランド品よりも、安く売られていた。一年間通してその売価差を積み上げてみると、衝撃的な結果が出た。
私は、この金額の大きさに愕然とした。

苦しいからといって、独自の優れた技術を捨て、明らかに劣っている借り物の技術に変えるのは、どう考えても納得がいかない。私は、会話を聞いていて情けなくなった。

「月へ行って戻ってくる時代なのに、まだ、そんなことを言っているのか。宇宙飛行士の防護服はいい素材をつかっているだろう。そのような観点で見れば、もっと性能の良い繊維が存在するんじゃないか。たとえば繊維メーカーに行っていろんな素材を研究させてもらったらどうだ。真空断熱など、断熱材を使わない方法もあるだろう。とにかく、素材メーカーに出かけていって研究してこい」

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