The Power of Silence

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同僚のヨルグは、コンサルファームや投資銀行を転々とし、さらにドイツ空軍で兵站を担当していた経験もあるドイツのエリート。
他のドイツ人と違って体型もスマート、見た目も若いが、実は40を超えているそうだ。
イギリスに留学経験があるらしく、英語は訛りの強いブリティッシュで、時折聞き取れない。
ディスカッションの時に時折見せる鋭い眼光は、軍隊時代に養われたものなのだろうか。
怒らせると怖そうだ。

彼とディスカッションをしていていつも感じるのは、気づいたら自分が説明責任を負わせれている、彼に対して報告義務がある、そんな関係で話が進んでいることだ。
ミーティングのイニシアティブをいつも取られてしまう。
自分の思い描いていたシナリオを簡単に破られてしまう。

一体何がそうさせているのか、よくよく観察してみると、彼は「間合い」の取り方が抜群にうまいのだ。
例えば、彼に何か意見を求めるとする。
すると彼は、"In my point of view"と高らかに言った後、すぐに意見を言わず、5秒、長いときは10秒くらい沈黙を作る。
彼は熟考しているようにも見えるし、大事なことを言うために言葉を探しているようにも見える。
ディスカッション中の5秒間の沈黙は、時に永遠にも感じられ、聞き手は否が応にも次の言葉を「待つ」、つまり「聞き入る」体勢にさせられる。
ミーティングの場に緊張感が生まれる。

そうした後に発せられる彼の言葉は、後で振り返ればなんてことは言ってなくとも、その瞬間はこれ以上なく重みのある意見として場に提供され、反論を許さない。
こうして彼は、議論を自分のペースに持ち込み、場を支配する。
同じような場面は、例えばバスケットボールの試合で、カウンターだ速攻だ、という場面で、ボールをもらったポイントガードがピタっと足を止め、試合のリズムを変えてしまうような感じだろうか。
そういうときは、なんとなくこのポイントが勝負だ、という雰囲気になるし、何か深い策があるように感じるものだ。
��書いてみると微妙な喩えだが。。)

なにしろ、会話のペースを変えることで、自分のペースに持っていく、自分の言葉に重みを持たせる、というテクニックは、ビジネスの世界では極めて有効だと実感。
日本でこういうテクニックを使う人を見ることはほとんどないが、ぜひうまく使えるようになりたいものだ。
単なるテクニックとしてだけではなく、沈黙を怖れず、その場で熟考する勇気は、正しい意思決定のためにも必須であると強く思う。

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ロシアショック、ほか

サラリーマン「再起動」マニュアルサラリーマン「再起動」マニュアル
(2008/09/29)
大前 研一

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「知の衰退」からいかに脱出するか?「知の衰退」からいかに脱出するか?
(2009/01/23)
大前研一

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ロシア・ショックロシア・ショック
(2008/11/11)
大前 研一

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大前研一氏の本を3冊。
普段からWEBページやメルマガなどで、折に触れ氏の考えを読んでいたので、総論としての真新しさはないが、総論から紐解かれた各論の解釈は、賛成できるもの、しかねるものあるが、本当に多方面にアンテナをはっているな、と驚嘆させられる。

今回読んだ中では、「ロシア・ショック」は新鮮でおもしろかった。
��新鮮でおもしろかったなどと言っている時点で氏には怒られそうだが)
モスクワはここから3時間の距離だし、近いうちに是非行ってみねば。

��以下、備忘録)
ソ連崩壊前の科学技術研究者の数を見ると、人口一万人当たりの研究者数はソ連が53人でダントツの世界一だった。

ロシアと比較した場合、中国にないものは人材と資源、インドにないものは資源である。そして中国にもインドにもないのはハイテクだ。人工衛星などの宇宙技術や、ICBMなどの軍事技術はソ連時代からアメリカと双璧をなしてきた伝統があり、ウラン濃縮など原子力技術も高い。

ロシア人の74%は「日本が好き」と答えており、日本人の82%が「ロシアに親しみを感じない」と答えているのとは対照的だ。また、BRICs諸国と比べてもロシアの親日度はダントツである。

「ロシアでビジネスを展開する上では、ただ2つだけ問題があります。1つはロシアには『白でない会社』、つまり透明性に欠ける会社が多いということです。たとえば『帳簿を見せてください』と言うと、『どっちの?』と聞かれる。相手によって見せる帳簿が違うわけです。2つ目は、良い技術を持っていながら、経営がずさんな会社が多いという点です。財務もセールスもマーケティングもまるでなっていないような会社がゴロゴロあるのが現状なのです」

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Leica D-LUX 4

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カメラ買いました。
硬派なデザインのLeica D-LUX 4。

一眼レフは、写真撮る気まんまんの日に持ち歩くにはいいのですが、そうでない日や、仕事の時などは、どうしても一眼レフは仰々しくなるので、サブで使えるコンパクトが欲しくて。
この製品、パナソニックのOEMなので、基本的なスペックはパナソニックのLumix LX3と同じですが、RAWデータ加工ソフトを通すことでLeicaの味付けがなされるそうです。

どんな写真が撮れるのか、ファーストショットは何を撮るか、、、楽しみです。

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Bahn Card

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Bahn Cardは、DB(ドイツ鉄道)が発行する会員カードのようなもので、年会費に応じて、25%から最大100%まで、ドイツ国内の全ての鉄道料金の割引が受けられるカード。
ちなみにDBはDeutsche Bahnの略とばかり思っていたが、どうやらDie Bahn(英語にするとThe Railway)の略らしい。

今回申し込んだのは、Bahn Card 25で、1年間鉄道料金が25%割引になる。
ドイツに来た当時は電車をどれだけ使うか見当もつかなかったので、なかなか申し込めずにいたけど、仕事で電車に乗る機会が増えてきたので、この機会にと思って加入。

早速使いたいな。どこ行こうかな。

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春間近

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花が咲いたり、日が長くなったり、晴れの日があったり・・・デュッセルドルフも春間近。
冬がつらくて長かったぶん、春の訪れに、日本では感じたことがないくらい心が躍る。

いろんなとこにでかけよう。

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Tout change rien ne change

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僕はもともと「ブランド」に弱い。
それこそ昔は、とにかく憧れのブランドモノを手に入れたくて、その価値もわからずに背伸びをしていた時期もあったし、今でもその傾向はある。
当初はとにかくブランドの世界観に触れたかっただけだったけど、最近思うのは、長きにわたって評価されている一流ブランドというのは、いずれ劣らぬブランド哲学があり、信念があり、時代に翻弄されながらも決しておもねることなく、自らの世界観を愚直に貫き通したからこそ一流である、という、何とも筋の通った、かっこいい生き様に僕は魅了されるし、そういう話が好きなのだと思う。
そして、そういう話で単純に感動してしまう自分も嫌いではない。

中でも、僕がもっとも憧れているのが、エルメスの世界観。

馬具用品店として名を成したエルメスだが、第一次世界大戦後の自動車の普及によって、馬車が移動の主役である世界は終わりを告げようとしていた。
三代目エミール・エルメスは、馬具だけでは生き残れないとの思いから、鞄や手袋などの革製品の製造を開始。
誇り高き馬具職人を説得し、革製品を作ってもらうには、相当の軋轢があったようだ。
実際、革製品への事業展開を機に、エミールの兄であり、生粋の職人であったアドルフはエルメスの経営権を売却し、兄弟の袂を分かつに至ってしまった。
その後もエルメスは、世界恐慌や第二次世界大戦など、時代に飲まれそうになりながらも、馬具商という原点を忘れることなく、しかし、未来を見据えて新たな挑戦をし続けている。

Tout change rien ne change -全てが変わり、そして何も変わらない

有名なエルメスのコーポレートアイデンティティ。
「エルメスは常に新しいことに挑戦し続けるけれども、エルメスの本質は何も変わらない」という思いが込められている。

エルメスの広告は、毎年斬新であり、美しく、研ぎ澄まされた世界観が表現されている。
雑誌の広告のページで、思わず見入ってしまうのはいつもエルメスの広告だ。
コンセプトは毎年変わるけど、どの年も広告のどこかに必ず馬が登場するのは、エルメスの原点、本質は馬具にあり、馬具の技術にあるのだ、というメッセージなのだと思う。

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Tout change rien ne change。
なんとかっこいい生き様か。

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オンリーワンは創意である

オンリーワンは創意である (文春新書)オンリーワンは創意である (文春新書)
(2008/09)
町田 勝彦

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液晶に経営資源を集中し、アクオスブランドでシャープを一躍トップブランドにした町田社長による変革の回顧録。

シャープはたしかに一流ブランドになったし、世界での知名度もぐんと上がったように思う。
液晶の次として取り組んでいる太陽光発電も、日本以上に欧州で存在感をアピールできるだろう。

本書でも書かれているが、シャープの成功は、液晶テレビのキーデバイスである液晶パネルを自社生産できた点にある。
逆にキーデバイスを持たなかったブラウン管では苦労の連続だったようだ。
「世界の中での日本」の戦い方の1つは、まさに、高い技術力を活かして次世代商品のキーデバイスをいち早く開発し、世界に供給するモデルだと思う。

その意味で、僕は、シャープが亀山をはじめ国内に工場を持ち、自らアセンブリーまで行って、最終製品である液晶テレビを販売する、というモデルにはいまひとつ賛成できない。
前にも述べたが、生産、特にアセンブリーに関しては、日本の付加価値は決して高くない。
シャープの場合は、テレビだけでなく白物も持っているので、自社ブランドのテレビに付加価値を持たせることが白物のブランド価値向上につながり、結果として会社全体の収益向上が期待できる、との見込みがあったのだろうとは思う。

しかし、キーデバイスである液晶パネルの段階が、この製品の付加価値としては最大で、組み立てや販売をシャープのみで行うことで、最終製品としての付加価値はどうしても落ちてしまう。
現に、収益面では厳しいものの、ソニーは液晶パネルを外部調達しながら液晶テレビの世界トップに躍り出た。
驚くほどのブランド力、販売力である。
シャープが自社ブランドに拘らず、ソニーに液晶パネルを提供していれば、結果的に世界中で売れるシャープの液晶パネルの量は格段に増えていたのではないか。
収益性としても、今以上に高くなっていたと思う。

もちろん、「自社ブランドのテレビを」という思いはよくわかるが、最終製品ブランドとして世界で戦える日本企業は、ソニーくらいのものだ。
日本全体を考えると、最終製品ブランドへの拘りを捨て、キーデバイス開発とその外販に「集中」していくことこそが、1つの道だと思う。


��以下、備忘録)
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2001年に生まれたアクオス一号機は、左右に大きな丸いスピーカーで、テレビは四角いものという、当時の常識を覆した個性的なデザインだった。しかし営業は、「こんなもの売れません」と苦い顔をし、アメリカのセールスマネージャーからは、「このデザインはテレビらしくない」と苦情が届いた。
しかし私はその形にこだわった。液晶モニターと区別するためには、中途半端なデザインでは、売り場で明確なメッセージを発信することができない。注目されなければ、名前とデザインを変えた意味がない。物議をかもすということは、それだけインパクトがある証拠なのだ。

ブランドを確立するための宣伝は、お客様の心に届くまで徹底して継続すること - これが私の持論である。

それまでシャープの製品は、ブランド力が低いが故に、たとえ機能性能が優れていても、トップブランド品よりも、安く売られていた。一年間通してその売価差を積み上げてみると、衝撃的な結果が出た。
私は、この金額の大きさに愕然とした。

苦しいからといって、独自の優れた技術を捨て、明らかに劣っている借り物の技術に変えるのは、どう考えても納得がいかない。私は、会話を聞いていて情けなくなった。

「月へ行って戻ってくる時代なのに、まだ、そんなことを言っているのか。宇宙飛行士の防護服はいい素材をつかっているだろう。そのような観点で見れば、もっと性能の良い繊維が存在するんじゃないか。たとえば繊維メーカーに行っていろんな素材を研究させてもらったらどうだ。真空断熱など、断熱材を使わない方法もあるだろう。とにかく、素材メーカーに出かけていって研究してこい」

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アジア三国志

アジア三国志アジア三国志
(2008/06/06)
ビル エモット

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今後のアジアの巨大な可能性と、そこで覇権争いを繰り広げるであろう中国、インド、日本の3国についてその現状と今後の展望、リスクを語ったのが本書。
身近な中国とインドで何が起こっているのかが(かなり冗長だが)よくわかるのと、特に日本がどう見られているのか、を知るきっかけとして興味深い一冊。

いろいろと気づきはあったのだが、最大の発見は次の点。

「OECDによる日本の実質GDPの予想成長率は1.4%にすぎない。つまるところ、日本の労働力はいずれ縮小するのだし、この10年間の生産性成長は微々たるものだった。1991年から2001年まで年間1.5%だった生産性成長率は、2002年以降は2%に上昇した。だが、経済が回復しているなら、ふつうはもっと速い生産性の成長を示す。なぜなら、それは企業が労働者を増やさずに生産を増やしている証拠だからだ。この経済サイクルのあいだに1.5%から2%の小幅な上昇では、基本的な部分が変わったとはとうていいえない。もっと画期的なものが必要だ」

日本の強みとしてよく語られるものの1つに、「トヨタ生産方式」「カイゼン」「見える化」などに代表される、生産性の高さがある。
現場の生産性が極めて高く、不良品率が低く、結果として製品品質が高い。実際、Made in Japanは壊れにくく、消費者にとっては、最初は高くても、長い目で見るとお買い得、というのは世界共通の評価である。
日本企業、特に製造業は、これこそ競争力の源泉とばかりに、現場の生産性向上/品質改善にさかんに取り組んできたし、「日本の強みはものづくり」といった論調も数多く見てきた。
実際僕は、直接目にしたわけではないが、日本企業の生産性というのは、すばらしく高いのだろう、という印象を持っていた。

しかし。
「生産性成長は微々たるものだった」 - というのが、世界から見たこの10年の日本の評価なのだ。
ここで言う「生産性」は、もちろん工場の生産性の話ではなく、広義の労働生産性という意味だが、いずれにせよ、日本企業が血眼になって取り組んできた、狭義の(工場の)生産性向上が、広義の生産性向上に与えるインパクトがわずか1-2%でしかない、と言う事実の意味するところを、我々は先入観を排して再考すべきではないだろうか。

奇しくもこれは、「日本企業の目指す姿」について、僕がここ数ヶ月感じていたこととまさに同じだった。
狭義の生産性向上はたしかに大切だし、日本の強みの1つであることは間違いないが、それによって得られる「付加価値」は、世界から見ればごくわずかでしかない。
ヨーロッパにいて強く感じるのは、世界的に見て、バリューチェーン上の「生産」という役割は、もはや日本に期待されている役割ではない、ということ。
この分野では、労働コストの安い中国や台湾への期待が圧倒的に高いことは明白であり、iPodのような、値崩れのしない商品ですらも、生産を担っているのは台湾企業であるというのが現実だ。
日本品質がすばらしいもの、誇るべきものであることは認めつつも、「生産」というものが本当に日本が担うべき役割なのかどうか、今一度考え直してみる必要があると思う。

では、日本企業がこれから目指す姿とは何なのか。
筆者は「もっと画期的なものが必要だ」と述べるに留まっているが、ここからは我々の出番だ。
これについては、また別の機会にゆっくり書きたいと思うが、もしかするとそれは、製造業の一部のファンクションと、むしろサービス業なのではないかと最近は感じている。
「世界の中の日本」というのは、ドイツにいるあいだの僕の自由研究テーマの1つなので、折に触れ考えていることをここに残し、考えを進化させていきたい。

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Luxemburg

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ルクセンブルクは、デュッセルドルフから約200kmの距離にあり、車だと2時間程度で行けてしまう。
デュッセルドルフから200kmと言えば、ベルギーのブリュッセルやアントワープ、オランダのアムステルダムもだいたい同じくらいであり、このあたりは身近な外国である。

「EU」という枠組みの存在感が増した今、いや、むしろそれ以前からかもしれないが、日本にとって、日本企業にとって、ヨーロッパは1つの経済圏、文化圏として考えられがちだ。
欧州戦略という大戦略はあっても、各国ごとの戦略はあまり聞くことがない。
「大欧州、十把一絡げ思考」で、各国の多様性にまで意識が及んでいないことが、日本企業が欧州で苦しんでいる1つの原因である。

わずか200kmでも国境をまたぐと、そこは全く別の経済圏、文化圏であると痛感する。
ルクセンブルクは、とにかく食事がうまい。
サービスも、日本には及ばなくても、ドイツと比べれば雲泥の差がある。
国民1人あたりGDPが世界一の、この豊かな国では、店はどこも18時とか18時半に閉店、夜は静まり返っている。
花を買っておしゃれに飾るのが好きなそうで、小さな街なのにフラワーショップとインテリアショップがやたら多い。
家にいる時間が長いのだから、みなインテリアには凝っているのだろう。

いろんな国の姿がある、とあらためて実感。

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