「奇貨居くべし」に学ぶ5つの人生訓(2)


人生訓その2は、「2. 日々の積み重ねが未来を形成する」です。


ーわたしは運がよい。
と呂不韋はおもう。奴隷にされるという最悪なときに、孫のようなすぐれた先生にめぐりあえて、教えをうけることができた。人の力を過大に考えるわけではないが、努力を積み重ねてゆけば、人はおもいがけない力を発揮するようになる。自分が自分におどろくようにならねばならぬ。不運や不遇を嘆き、他人の薄情さを怨んでいるうちは、自分が自分を超えていない。努力が足りないあかしである。ほんとうの高みに登れば、展望がひらけ、風が変わる。人の世の風も変わるのである。

「理由のないことは起こらない。自分からでていったことは自分にかえってくる」
と呂不韋は孫子にさとされたことがある。
未来は起こるのではなく、起こすものであろう。自分の現在と過去からでていったものが、未来としてかえってくるのではないか。
呂不韋はそうおもいたい。

一日に千里を走破する馬に乗ってしまった者は、一日に五十里しか走らない馬にいらだつであろう。しかし呂不韋は千里の馬に乗ろうとはおもわない。五十里の馬が二百日歩きつづければ、一万里のかなたに到着する。歩きつづけることのほうが大切なのである。呂不韋はそう信じている。



呂不韋はある時期、秦の捕虜となり、奴隷として穰邑に連れていかれるのですが、そこで孫子(荀子)と出会います。
奴隷にまで堕ちた自分に絶望していた呂不韋でしたが、荀子に出会い、荀子から学ぶことで努力し続けることの尊さを知り、以降の彼はとにかく未来に向けて歩みを止めずに進み続けます。
小さな努力の積み重ねで彼は最終的に秦の丞相まで昇りつめ、さらに理想の世界の実現にむけてそこから努力し続けます。

仕事にしても私生活にしても、とかく我々は一足飛びに結果を求めがちで、なかなか結果が出ないことは途中で諦めてしまいがちですが、ゴールを見失わずに少しでも近づいていこうとすることがどれほど重要か。
誰しもそうやって掴んだ成功体験を持っているのに、新しい困難や挑戦にあたるとそのことを忘れてしまいがちです。
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MR PORTER


イギリスに拠点をおくメンズファッションのオンラインショップ、MR PORTERで、DUVETICAのダウンジャケットを買いました。
Dionisio Padded Full Zip Jacket

このショップ、初めて買ったのですが、届いてみてそのサービスの質の高さに驚きました。
久しぶりに気分がよかったので、ここに書き留めておきます。

まずは注文してから届くまでの速さ。
注文した翌日に"Your order dispatched"(出荷しました)のメール、それから2日後にはマンションに不在票が投函されていて、今日再配達してもらいました。注文してから届くまでわずか4日。イギリスから発送しているのに、下手な国内サイトより速いです。

次に、信じられないほど丁寧な梱包。
ダウンジャケットを、MR PORTERオリジナルのガーメントに包み、それを包装紙でくるみ、さらにオリジナルのGift Box(写真奥)に梱包し、それが段ボールに入れられて送られてきました。こんな時代になんという過剰包装!

次に、国際配送へのきっちりした対応。
段ボールの中には納品書などいくつかのペーパーが入っていましたが、そのうちの1枚に関税と消費税に関するお知らせがあって、「商品の送料には関税と消費税が含まれているので、お客様はどのような税金請求にも応じる必要はありません。もし支払いの請求をされた場合はxxxまで連絡ください」とのこと。税処理をしっかりやってくれるのは、日本ではそこまでではないでしょうけど、国によってはすごくありがたいでしょうね。

最後に、不具合時の返品対応。
オンラインショップだからこそなのかもしれませんが、返品の場合の手続の方法と郵送時の必要書類、返送先が書かれたDHLの送り状まで、すべてセットで梱包されていました。
海外からの個人輸入は返品が面倒だったり、もはや不可能なくらいわかりにくかったりということがありますが、逆にここまで丁寧に用意してくれていたのは初めてです。

そんなこんなで、久しぶりに海外のショップにホスピタリティで驚かされました。
イギリスは、昔出張した時もホテルなんかで非常に気持ちいいサービスを受けた思い出があり、この国の英国紳士ぶりにはかなり好感を持ってます。

このダウンジャケット、抜群にかっこいいです。サイズもばっちり。
加えて、DUVETICAは、日本のセレクトショップで買うと6万円前後しますし、今回買ったモデルは日本未発売なんですが、輸入代行サイトなんかでは同じように6万円程度で売ってました。
でも、自分でサイトから購入すると3万円ちょっとで、これだけ丁寧にデリバリーしてくれるのですから、大満足。

いい買い物ができました。
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「奇貨居くべし」に学ぶ5つの人生訓(1)



奇貨居くべし 天命篇 (中公文庫)奇貨居くべし 天命篇 (中公文庫)
宮城谷 昌光

中央公論新社 2002-04
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少し前にも書きましたが、宮城谷昌光の「奇貨居くべし」がようやく読み終わりました。

実に人生訓に富んだ傑作で、「本からの学び」という意味では「孟嘗君」以上ではないでしょうか。
孟嘗君は貴賓に生まれ、生まれながらの大才、という印象ですが、呂不韋は商人の子として生まれ、家族の愛から遠かったり、奴隷になったり、命を落としかけたり、苦難の連続の中で成長していくので、大業を成し遂げる人と平凡に生きて終わる人との違いが浮き彫りになっていたように感じました。
まさに座右の書。何度も読み返すべき本だと思います。

呂不韋の生きかたの中で、僕が特に肝に銘じておくべきだと感じた5つの人生訓を書き残しておきたいと思います。
相当長くなりそうなので、1つずつ。


1: 人を活かすことが自分を活かす

孟嘗君をみて、呂不韋ははじめて人に接することのおもしろみをおぼえた。ことごとしさをまったくあらわさずに、人を惹きこんでゆく心のありかたを我儂のものにすれば、人生はずいぶん豊かなものになるであろう。張苙が悍馬であるとすれば、それを馴らしてみたい。おのれの性質に適わぬ者をしりぞけ、あるいは避けつづけていては、いつまでたっても人としての度量はひろがらない。


「失礼ですが、蔡氏は、他人に与えずして自己を富まそうとしているようにみうけられます。無知といわれる農人でも、種を播き、水をあたえねば、穀物を得られぬことを知っております。虚空に種をとどめ、水をやることを吝しんでいては、どうして天地のめぐみを得ることができましょうや」(呂不韋)

藺相如と黄歇は国家のためにおのれを殺してもかまわぬ、いわゆる忠義の姿勢を保持している。しかし孟嘗君と魏冄は、おのれを活かすことが人を活かし、国家をも活かす、という心の構えかたをつらぬいている。死ぬということに、誉れも、美しさも、みない。
「活人」
とはそういうことではないか。人と歓びあうことが精神の基礎である。

儒家の教えは、命令と禁止のくりかえしである。ああせよ、こうしてはならぬ、ということばを発する力の源には大衆の知力を低くみる支配者の伝統が生きている。だが、道家は命令も禁止もしない。道を示すだけである。その道を歩こうとすれば、とたんに変幻する道である。呂不韋は孫子から多くのことを学んだが、貴門のうちで家臣を頤使するわけではない呂不韋は、巷にあって道家の教えにそった生きかたをえらんだ。人を救うことによって人に救われ、人を富ますことによっておのれも富んだ。こまかくみれば、物をあたえて、人を得たのである。人ははじめから広い世界をもっているわけではない。呂不韋もおそらくそうで、しかし呂不韋は人を得ることによって、世界を広げてきたのではないか。

まず1つめは、なんといっても「人を活かす」です。これは、「奇貨居くべし」だけでなく「孟嘗君」でも「管仲」でも共通していて、宮城谷小説が理想とする人の生きかたの核となる部分のように感じます。
「人のために生きれば自分も生きたことになり、加えて富も舞い込む」というのは、そもそものビジネスの意義が世の中をよりよくすることにあることを思い返すと当たり前のことなのですが、当たり前だけに忘れてしまいがちで、つい自分中心に考えてしまいがちなんですよね。。
ビジネスの世界では、日々様々な課題に対して「何が正しい意思決定なのか」「失敗のリスクをどうコントロールするか」に知恵をしぼるわけですが、僕はある時から、ビジネス上の意思決定に正解はなく、であるがゆえに、「自分が世界とどう向き合いたいか」「世界をどう変えたいか」を常日頃から考えることが重要で、意思決定とはその価値観を世に問うことであり、それが社会人の醍醐味だ、と思ってます。

「奇貨居くべし」では、その重要さを再認識させられた思いでした。
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Ninpu Talk with LiLy


今日は一風変わった本ですが…妻からの課題図書を読みました。

Ninpu Talk with LiLyNinpu Talk with LiLy
LiLy

講談社 2011-07-01
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妻の出産予定日まであと10日程度にせまってますが、実のところ、僕は今になってもほとんど実感がないのです。
もちろん、妻のお腹を触れば胎動は感じるし、家は徐々に赤ちゃんグッズが増えるしで、以前よりは実感が増してはいるのですが、なんとなく遠い未来の話をしているようで。。
そんな様子を見てるせいか、妻からは「この本を読め」と。
普段僕もあれ読めこれ読めと本を薦めてるので、まあたまには薦められた本もね、ということで、TSUTAYAでコーヒー片手に読んでみました。

妊娠発覚から出産まで、章を追いながら時系列で描かれていて、前半はまあ淡々と。
で、最後の2章が、2人の女性がそれぞれ出産する場面なんですが、文章力のある作家さんが書いてるからなのか、情景が本当にリアルで、しかもかなり壮絶で、TSUTAYAで涙が出そうになり。。。これには僕自身驚きました。

妻が妊娠してなかったら間違いなく涙は出ないでしょうね。
自分で思ってる以上に、身近なこととして捉えてるんだな、と感じて、変な話ですが、少し自分に安心しました。
おかげで出産のイメージも少し具体的になりましたし、それは決して楽しいだけじゃなくかなり大変だってことに真剣に気づいたわけですが、妻が怖いと言ってる気持ちも少しわかるようになり、読んでよかったと思います。

まあ、これを読む限り、僕は当日何の役にも立たないでしょうけどね。。
何の役にも立たないけど、せめて怒られないようにはがんばるので、どうかよろしくね。

なんだかんだと言っても、やっぱり僕は楽しみでしょうがないです。
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経済危機のルーツ



経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか
野口 悠紀雄

東洋経済新報社 2010-04-09
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日本経済のこれからを考える上でよいインプットをくれた本。非常に有意義な読書。

日本が製造業依存から脱却しなければならないと言われだして久しい気もするし、ものづくりこそ日本の強みという論調が今でも根強いような気もしますが、僕個人としてはやはり製造業依存から脱却しなければならないように思います。
(厳密に言うと、アッセンブリーまでを自分でやるというモデルとしての製造業のはもうやめたほうがいいし、自社ブランドにこだわる必要もない、ということ)
アッセンブリーは労働集約的で、人件費の高さがネックになるし、この本に書いてあるとおり歴史的にも製造業は一人当たりGDPが相対的に低い国が、通貨価値が相対的に安いことと相まって世界を牛耳っているのだから、そういう意味でも日本の役目は終わったのでしょう。

製造業という意味では、以前に書いたように、「Appleのiphoneの利益の約35%は日本企業が取っていて、それは他のどの国よりも多く、iphoneが売れて一番もうかるのは日本」みたいな中間財でもうけるビジネスモデルが理想だと思ってます。
「細部にまでこだわる」といわれる日本人気質は、完成品でやっちゃうと「過剰スペック・高コスト」という負の側面に陥りがちだけど、部品とか素材レベルでは「高い技術力に裏打ちされたキーデバイス」といったようなプラスの側面が作用する可能性が高いように思うので。

一方で僕は、ドイツ駐在時の日常生活での体験や、欧米人の同僚との会話から、日本の最大の強み(欧米人が真似できない、かつ尊敬していること)は"politeness"や"hospitality"だと実感し、であるがゆえにサービス業の海外輸出を今後のキャリアディベロップメントの柱に据えようとまで考えているのだけど、ここでいうサービス業ってなんだ!?というのが問題。
というのも、politenessやhosipitalityと聞いてすぐに思いつく産業は観光・ホテル業だったり外食産業だったりですが、問題はこれらの産業がどちらかというと労働集約的で、労働生産性が低く、たとえ製造業からこれらのサービス業に産業構造を転換したとしても、国の生産性を上げることにつながらなさそうなのです。
politenessとかhospitalityって人の性格として蓄積されていくものなので、素直にアウトプットをすると労働集約的なサービス業、となるのはある意味当然なのですが、それではだめだというのを本書を読んで再認識させられました。
人がそのままやることではなく、そういう人たちだからこそできる産業だったり、プラットフォームだったりに転換できるといいのですが。。
医療とか、アニメやコミック含むコンテンツとか。。このへんは引き続き考えていきたいと思います。

シンガポールなんか上手に国を発展させてるなぁと感じるので、一度しっかり勉強してみるべきですね。


(以下備忘録)
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【序章 なぜ歴史を振り返るのか】
80年代においては、社会主義経済の失敗が明らかになった。中国も工業化した。これは、製造業に関する条件を大きく変化させるものであった。それまで社会主義経済圏に閉じ込められていた膨大な数の労働者が、資本主義経済の枠内に参入し、その結果、製造業の生産コストが大幅に低下した。

【第1章 現代世界経済の枠組みが1970年代に作られた】
石油ショックとは、さまざまな財・サービスの相対価格が調整されていった過程である。

「価値の基準であり続けたのは、金との兌換停止によってペーパーマネーとなってしまったドルではなく、金であった」と考えれば、原油価格は格別に上昇したわけではなかったのだ。むしろ「金表示の原油価格が不変に保たれた」と言うべきであろう。

石油ショックとは、原油という特殊な財の価格が変わっただけの過程ではなかった。むしろ通貨の価値が金との関係において、またさまざまな国の通貨間で、調整された過程だったと考えることができるのである。

日本と西ドイツが石油ショックに対して適切に対応できたのは、経済システムの優劣ではなく、むしろ、日本もドイツも通貨が増価した国であったことだ。そしてイギリスやイタリアの通貨は減価した。ドルに対して増加した通貨の国では、原油価格上昇の影響は緩和されたことになる。

西ドイツでも日本でも、戦災によって戦前からの工場の多くが失われた。しかしそのために、新しい技術体系にあった新しい工場を造ることができた。技術が大きく変化した世界では、生産性向上のために、そのほうがかえって望ましかったのだ。それに対して、イギリスやアメリカは、戦前の古い技術体系(蒸気機関)から完全は抜けだせなかった。

高度経済成長の基本は、農業経済から工業経済への移行なのである。

50年から70年にかけての人口成長率は、イギリスでは13%だったが、西ドイツでは28%に及んだ。人口成長率が高ければ、それだけで経済全体の成長率は高くなるが、若年者が多いために労働生産性も高まる。また高齢化に伴う社会保障負担が低くなる効果もある。

日本や西ドイツでは間接金融中心で巨大銀行が存在し、工業化のための資本供給で重要な役割を果たした。

企業の重要決定に労働者が参加する共同決定法の背景にあるのは、階級意識が希薄であるドイツ社会の構造だ。

全体主義的・集計的体制は、新しい情報技術の下では効率が下がるだけでなく、生き延びることすらできない。社会主義国家の崩壊は情報技術の転換とほぼ同時期に起こっているのだが、これは偶然ではなく、必然だった。
(メインフレームコンピュータから分散的情報処理システムへ)

【第2章 経済思想と経済体制が1980年代に大転換した】
70年代のアメリカは、経済面でも政治面でも、最悪の時期を経験していた。

社会主義が保守的になってしまったのは、イギリスだけの特殊事情ではなく、むしろ共産圏において顕著な傾向だった。ソ連だけでなく東欧諸国においても、超高齢者が権力の座に座り続けていた。そして、「体制を変革するには気が遠くなるような努力が必要なので、そのままにしておいた」のである。

サッチャーが目的としてのは、既得権に守られた国内産業を支援することではなく、むしろそれらを排除し、競争力のある効率的な産業を育てることだった。重要なのは企業の国籍ではなく、企業のビジネスモデルであり、その遂行能力であるとされたのだ。

TINA(There is no alternative to market)は、「市場が完全無欠だ」とか、「市場はすべての問題を解決する万全の手段だ」などと主張しているのではない。市場システムに原理的な問題があることは、十分に認識されている。「市場を代替する資源配分のメカニズムは、存在しない。少なくとも、社会主義経済や国営企業は、市場の欠陥を是正する手段にはなりえない。だから、やむをえず市場システムに依存するしかない」というのがTINAの主張である。

イギリスでもアメリカでも、国力が落ちるところまで落ちれば、強力な政治家が現われて国と経済を改革する。ソ連でも同じことが起こった。これは、経済の自動調整機能にも似たメカニズムである。

広大な国土に広がる経済活動のすべてを把握することなど、誰にもできない。だから、いかに深刻な病に陥ってもコントロールできない。「社会主義経済は経済運営に必要な情報を伝達できない」ということこそ、ハイエクによる計画経済批判の中心的論点だが、まさにそのとおりのことがソ連で起きていたのだ。

共産主義国家は検閲と情報遮断が統治の基本

ドイツ再統一は、ドイツ没落の始まりだ。その理由は、東西間の経済的格差が大きすぎたことだ。

それまでの開発途上国は、経済成長のため、輸入に頼っていた財を国内で生産することを目的とした。しかし、輸入品に比べてコストが高くなり、結局は経済発展が阻害されることとなった。こうした失敗した国の典型がインドだ。中国が行ったことは、これと反対だ。国内需要とはあまり関係のない分野で輸出産業を興し、それをテコにして経済発展を行おうとした。

【第3章 ITと金融が1990年代に世界を変えた】
80年代の日本の生産性は本当に高かったのだろうか?日本企業の利益率(営業利益/総資本)は、高度成長期の8%から、80年代には5%程度にまで落ち込んでいたのである。こうなった基本的な原因は、欧米諸国との賃金格差が解消され、さらにアジア新興工業国との競争が始まったことだ。

ユーロとは、ドイツに鎖をつけ、強いマルクを引きずりおろすための装置にほかならない。

証券化は、「各ローンの破綻は独立に起こる」との仮定だ。景気が悪化して住宅価格が下落するような、すべての借入者が同じような影響を受けるリスク、すなわち市場リスクに対しては証券化は機能しない。

これらの資産がどれだけの価値があるものかを評価する「価格付け」が最も重要なところだが、最も重要なところでファイナンス理論が使われず、「格付け」という不完全な手法が使われた。

保険は分散投資の一種なので、個別リスクに対しては機能するが、システマティック・リスクに対しては機能しない。それに対して、CDSはシステマティック・リスクに対しても機能する。

【第4章 1990年代はアメリカとイギリスの大繁栄時代】
アメリカの製造業の雇用者は、07年には1343万人まで減少した。雇用者総数に占める製造業雇用者の比率は、10.1%にまでなった。経済全体に占めるウエイトが、40年間に3分の1近くに低下してしまったわけである。

80年代のアメリカ経済におけるサービス産業化の過程では、生産性の低い対人サービスが増えたのではなく、新しい技術に支えられた生産性の高い高度なサービスが増えたのである。

中国の工業化という大きな経済条件の変化に対して最も重要なのは、「中国ができない高度の経済活動」に特化してゆくことである。

イギリスが復活したのは、金融による。「ビックバン」がもたらした「ウィンブルドン現象」による。つまりイギリスの金融立国は、それまでのイギリスの伝統的な金融機関が成長して実現したのではなく、プレイヤーが交代して外国からの選手が入ってきたために実現したのだ。

イギリスでもアメリカでも、大学や研究機関が継続して強かった。イギリスの製造業は没落したが、自然科学の基礎研究では、イギリスは継続して世界をリードしていた。また、経済学などの社会科学の面でも、イギリスは世界の最高水準を維持した。

「脱工業化」とは、高度なサービス産業への移行であり、それを支える高度の知的活動が必要だ。そのベースには、ITの進展や金融革新がある。イギリスやアメリカの脱工業化は、決して地に足がつかない浮ついた動きではないのである。

従来の世界経済では、先進国から開発途上国に対して直接投資を行うというのが、普通のパターンであった。80年代以降の中国の工業化の過程でも、そのような投資が進展した。しかし、イギリスで生じた現象は、それとは異質の新しい動きである。それは、先進国から先進国への直接投資だ。それによって、金融の新しい活動などの新しい経済活動が起こったのである。これを、「21世紀型のグローバリゼーション」と呼ぶことができる。

ニューヨーク市場での金融取引規制強化や、9・11テロ以降のアメリカの反イスラム風潮やテロ警戒の強化を産油国が嫌い、歴史的につながりの強いイギリスを選好するのだろう。さらに米企業改革法の結果、きびしい規制を嫌った外国企業の一部が、上場市場をロンドンに移した。

アイルランドが急成長できた要因として指摘されるのは、教育と海外からの直接投資である。

法人税引き下げは、国内企業の税負担を下げるためのものではなく、海外からの投資を受け入れるためのものだ。

いまやアイルランドは、ITの世界的ハブになっている。

アイルランドの教訓はきわめてシンプルだ。「高校と大学の授業料をゼロにせよ。法人税制を簡素化・透明化し、税率を引き下げよ。外国企業に門戸を開け。経済をオープンにせよ。英語を話せ」

「90年代の発展は、ヨーロッパの周辺国において実現した」のは、英語力と無関係ではない。小国には自国語で大学の教科書を作るほどの人口はいないから、高等教育の教科書はどうしても英語になる。それだけでなく、日常の仕事でも英語が不可欠だ。

【第5章 未曾有のバブルとその崩壊:2000年代】
日本が外需依存で経済成長したのは、02年から07年にかけての特殊事情だ。日本の貿易依存度は、もともとそれほど高くない。高度成長の最も大きな牽引力は、国内の設備投資だったのである。

賃金が上昇しないので、景気回復の実感はほとんどなかった。この間に格差が拡大したといわれたが、それは賃金が上昇せず、その半面で高所得者の所得である資産所得(株価上昇)が増大したからだ。これは外需依存経済成長がもたらした必然の結果だった。

アメリカ人は、なぜビッグ3の自動車でなく、日本車を買ったのか。言うまでもなく性能がよくディーラーのサービスがよかったからだが、それだけではない。この間に円安が進行したことが大きな理由だ。

重要なのは、この状況が危機以前の水準に戻ることは、期待薄であることだ。なぜなら、現在の事態は、バブル崩壊によってもたらされたものだからだ。バブル時代の水準が、長期的な傾向からみれば高すぎたのであり、それが元に戻っただけだ。

アメリカ一極集中が終わるといっても、中国やインドが、アメリカなしで独自に経済成長できる段階に達しているわけではない。これまで、中国は輸出先として、インドはITアウトソーシングの発注元として、それぞれアメリカに強く依存して発展してきた。その基本構造は、今後もかなりの期間継続するだろう。

ITも金融も、基本的な技術がアメリカで生まれ、アメリカで発展してビジネスになった。今後も、金融やITにおいてアメリカが世界を先導することは、ほぼ間違いない。

「高賃金であるが高い技術力を持つ」という日本の比較優位を生かす国際分業の姿は、機械などの資本財や部品などの中間財の輸出に特化することである。
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Cup Noodle


楽天オープン期間中に、ナダルがカップヌードル(主にシーフード)を30個食べたという噂を聞き、宣伝効果そのままにカップヌードルが食べたくなり、夕飯に2つも食べてしまいました。。

"ナダルは今大会、試合前や試合後にカップ麺を食べる姿が目撃されているが、「カップ麺ばかり食べているわけではない」とコメント。「鉄板焼きを食べたし、魚市場にも行った。世界中のどこの国でも、日本食を食べるようにしている」と述べた(2011/10/09 ロイター)"

うまかったです。
が、これでまたしばらくはおあずけにします。
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Rakuten Japan Open Tennis Championships Final


楽天オープン決勝戦。自宅で観戦しました。

なぜ準決勝は現地に観戦しにいって、決勝は自宅にしたのかと言うと、以前ローランギャロスに全仏の女子シングルス決勝(サフィナvs.クズネツォワ)を観に行った時に、けっこう一方的な展開で、1時間強でセットカウント2-0で終わってしまい、すごくあっけなかった記憶があったんです。
で、それなら準決勝のほうが2試合観られるし、準決勝まで来ればかなりの好試合になるのは間違いないし、ということで、今回は準決勝を現地観戦、決勝は自宅観戦にしました。

しかし、今日の決勝は「現地で観たかった!」と思わずにはいられない熱戦。
ナダルの出来は昨日とは明らかに違うし、そのナダルを1セットダウンから逆転で下したマレーは覚醒したかのように強かった。
惜しいことをしましたが、2人とも来年も来たいと言っているので、来年は決勝を観に行きたいです。

マレーはダブルスも優勝して大会2冠。おめでとう!
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Rakuten Japan Open Tennis Championships


今日は有明テニスの森で開催中の楽天オープンのシングルス準決勝2試合、ダブルス準決勝2試合の計4試合を観戦に行きました。

第一試合はナダルvs.フィッシュ。
ナダルは決して本調子じゃないように見えましたが、第一セットを取った後の第二セットは徐々にノッてきたようで、ナダルらしいショットがいくつかありました。

それよりおもしろかったのは第二試合のマレーvs.フェレール。
ストローカー同士の激しい打ち合い、マレーの200km/hを超すサーブ、非常に見応えがありました。
激しい打ち合いでしたが、少しずつマレーのほうが上回っていて、終わってみればマレーの圧勝でした。
個人的に2008年に初めてプレーを観て以来、マレーを応援し続けているんですが、今日は生でそのすごさを感じることができてよかったです。

その後のダブルスでもマレーがお兄さんとともに登場。
こちらもフルセットの末勝ち上がって、マレーは明日シングルスとダブルスの二冠を狙っての戦いになります。
がんばってほしいなぁ。特にシングルス。

楽しい一日でした。
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鹿児島


写真は全く関係ないですが、日曜から火曜まで鹿児島に出張しました。
鹿児島を訪れたのは小学生の頃の家族旅行以来でしょうから、20年ぶりくらいでしょうか。
九州新幹線が全線開通したからか、鹿児島中央駅は新しい駅ビルが建っていて、思った以上に都会的でした。

鹿児島といえば、僕のお気に入り番組であるBSジャパンの「写真家たちの日本紀行」で、師岡清高さんが撮影していて、その回は僕の今年一番のお気に入りでした。
彼のような写真が撮れるようになりたいと思ってたこともあり、今回せっかく鹿児島を訪れるので、写真を撮ろうと思っていたのですが、残念ながら仕事におわれて全く撮れませんでした。
次回の出張に期待です。妻の出産が遅れるとかぶりそうなので、どきどきしてますが。。
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