最近読んだ本(6−7月)


6-7月に読んだ本(の中でおもしろかったもの)を備忘録的に。

堺屋太一「歴史の使い方」「東大講義録 文明を解くI」「東大講義録 文明を解くII」
歴史の使い方 (日経ビジネス人文庫 グリーン さ 3-6)歴史の使い方 (日経ビジネス人文庫 グリーン さ 3-6)
堺屋 太一

日本経済新聞出版社 2010-01-06
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東大講義録 文明を解く I (日経ビジネス人文庫)東大講義録 文明を解く I (日経ビジネス人文庫)
堺屋 太一

日本経済新聞出版社 2010-11-02
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東大講義録 文明を解くII―知価社会の構造分析 (日経ビジネス人文庫)東大講義録 文明を解くII―知価社会の構造分析 (日経ビジネス人文庫)
堺屋 太一

日本経済新聞出版社 2010-12-02
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敬愛する堺屋太一による歴史講義。
根底に流れている思想はどの本も同じだけど、だからといって一冊読めばよい、というわけではない。
どの本をとっても毎回新しい発見がある。付箋が足りないくらいたくさんある。
しかも、これを入り口に、もっと多くの歴史本を読もうという気にさせられる。終わりなき歴史への旅への先導者的存在。再読間違いなし。

ランドール・ササキ「沈没船が教える世界史」
沈没船が教える世界史 (メディアファクトリー新書)沈没船が教える世界史 (メディアファクトリー新書)
ランドール・ササキ

メディアファクトリー 2010-12-21
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同じく歴史シリーズ。これが傑作!
堺屋太一のように学びがあるというわけではないけど、とにかく「へえ〜」と思うことの連続。
しかし、沈没船発掘って今でもやってるんですね。そしてそこから新しい歴史的発見があるというから驚き。

塩野七生「日本人へ リーダー篇」「日本人へ 国家と歴史篇」
日本人へ リーダー篇 (文春新書)日本人へ リーダー篇 (文春新書)
塩野 七生

文藝春秋 2010-05-19
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日本人へ 国家と歴史篇 (文春新書)日本人へ 国家と歴史篇 (文春新書)
塩野 七生

文藝春秋 2010-06-17
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塩野七生による時事評論。「国家と歴史篇」はいまひとつでしたが、「リーダー篇」では氏の深い洞察力とローマ史に裏打ちされた大局観、実利性、そして独特のリーダー哲学に頷かされること多数。
「政治とは、個人ではできない事柄を代わって行うことではないか」という言葉には深く感銘。


連城三紀彦「恋文」
恋文・私の叔父さん (新潮文庫)恋文・私の叔父さん (新潮文庫)
連城 三紀彦

新潮社 2012-01-30
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「私だけが犠牲になっているわけじゃないの。あなたは生命っていうもっと大きな犠牲払っているでしょう。私には、あなたと違って今失うものがあっても、それをとり返す時間があるわ。これ、私のギリギリの本心。だからあなたも本当のこと答えて」

どこかねじれた人間関係がテーマの短編小説。
美しい日本語、静謐な世界観、ミステリー作家ならではの後半でのサプライズ…1話あたり1時間の極上の読書。


アリソン・ゴプニック「哲学する赤ちゃん」
哲学する赤ちゃん (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)哲学する赤ちゃん (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)
アリソン ゴプニック 青木 玲

亜紀書房 2010-10-27
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「子供と大人の間には、進化的に一種の役割分担ができあがっています。子どもはいわば、ヒトという種の研究開発部門に配属されたアイデアマン。大人は製造販売担当です。子どもは発見、大人はそれを実用化するのが仕事です。子どもは無数のアイデアを提案しますが、実はほとんどのものは使えません。実行可能な案はほんのわずかです。大人の能力、たとえば長期計画の立案、迅速で自動的な実行、シカやトラや締め切りへの熟練した対応と比べれば、赤ちゃんや幼児の能力など、まるでお話になりません。しかし、斬新な変革能力、それをもたらす想像力と学習能力で競えば、負けるのはきっと大人のほうでしょう。」

人間が進化する動物であることを切り口に、赤ちゃんとは何なのかを哲学する本。
子どもが生まれたこのタイミングで読んでよかった。彼に対する見方が変わりました。
子育てに悩んだら、時折ぱらぱらと読み返したい一冊。


それにしても、最近は歴史モノが多いなぁ。
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glee!!


毎晩のように楽しんでいたglee。
オハイオにあるマッキンリー高校のグリークラブ(合唱部)を舞台にしたミュージカル仕立てのドラマで、圧倒的な歌唱力が魅力。
一方で、いじめや人種差別、同性愛、宗教など、アメリカが抱える社会問題をちらほらと垣間見せる社会派な一面もあり、ストーリーも奥深い。
シーズン1、シーズン2と一気に観ました。

最近は通勤中の音楽ももっぱらgleeのサントラ。ということで、シーズン1、2の中での個人的トップ10を選んでみました。
最初はトップ5くらいにしようと思ったけど、絞りきれなかった。。それくらい名曲ぞろいです。

10. I Want to Hold Your Hand
シーズン2第3話。
カートの父親が倒れ、メンバーが心配しながら神に祈るなか、無神教のカートが父への想いをのせた曲。
オリジナルはビートルズ。カートの声が切ない。ちょっと泣きそうになった。

9. True Colors
シーズン1第11話。
シンディ・ローパーの名曲をティナがリードボーカルで歌い上げる。
3位に挙げたJust the Way You Areもそうだけど、gleeは「あなたはあなたのままでいい」というメッセージの曲がけっこうある気がする。

8. Lean on Me
シーズン1第10話。
ニューディレクションズがフィンとクインのために歌った優しさにあふれた曲。
アーティの声がいい。

7. Defying Gravity
シーズン1第9話。
レイチェル×カート。高音対決での曲。
この2人のコラボは聴かせる!

6. Loser Like Me
シーズン2第16話。
ニューディレクションズの州大会オリジナル曲。
ニューディレクションズのメンバーが持つ劣等感を力強く跳ね返す歌。ここまでの話を見てきたぶん、胸をうつものがある。

5. Total Eclipse of the Heart
シーズン1第17話。
レイチェル、ジェシー、フィン、パックの豪華コラボ。
いい曲だなぁと素直に。

4. Beth
シーズン1第20話。
子どもの名前をつけるかつけないかをめぐってクインとパックが喧嘩をした後、パックがクインにむけて歌った曲。
オリジナルはKISSだそうだ。正直パックのほうがいい。
仕事や友だちと家庭のはざまでの男の葛藤。わかるなぁ。

3. Just the Way You Are
シーズン2第8話。
カートの父親とフィンの母親の結婚式で、ニューディレクションズが熱唱。
フィンのカートに対するやさしい気持ちが染み入る。このエピソードはMarry You含めBruno Marsの曲がとてもよかった。

2. Raise Your Glass
シーズン2第16話。
シーズン2から登場の男子校ウォブラーズが州大会で披露。
ウォブラーズといえばTeenage Dreamが大評判だけど、こっちもノリがいい。YouTubeにアップされている、この曲の振り付けを真似る子どももかわいい。

1. Bohemian Rhapsody
シーズン1第22話。
ニューディレクションズのライバルチーム、ジェシー率いるボーカルアドレナリンが州大会で歌ったQUEENの名曲。
ジェシーの歌唱力、ボーカルアドレナリンのダンスが魅力十分なのに加え、クインの出産シーンと同期した場面展開が見事!


シーズン3が楽しみです。
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90ミニッツ



WOWOWの舞台モノ鑑賞第二弾。三谷幸喜演出による「90ミニッツ」。

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病院の一室、整形外科副部長の医師(西村雅彦)のもとに、ひとりの男(近藤芳正)が案内されてくる。9歳の少年が交通事故で担ぎこまれて手術を必要としており、男はその父親だった。手術には承諾書へのサインが必要だが、父親はそのサインを拒否。
90
分以内に手術をすれば助かるという状況。頑なに手術承諾書へのサインを拒否する父親と、まずは命を守るべきだと手術をするよう説得をする医師。それぞれが自分の正しさをぶつけ、本性をさらけ出し、打開策を見出そうとする中、少年の容態は徐々に悪化。緊迫の度は刻一刻と深まっていく。
WOWOW番組紹介より)
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人それぞれの「正義」があって、「唯一絶対の正義」などというものはない、という話。
こういう話を観て、両者の主張する正義が理解できたり、こういう時にどういう行動をとれるかって本当に難しい話だよなぁ、と思えるようになった自分が新鮮。
例えば、今回の話では僕自身がその場にいたらとるであろう正義は、大多数の人と同じく、迷いなく医師側だと思うんですが、かといって父親側の正義を「狂人の沙汰だ」と断罪して聞く耳を持たないって気分じゃなかったんですよね。
若い頃はこういう話を「頭でわかってた」だけで、実際にそういう場面に出くわすと頑なに自分の正義をふりかざして、それでお話にならないと会話終了、ってことが多かったですもん(まあ今でもそういう場面に出くわすとすぐ頭に血が昇って結果は一緒な気もしますが)。

そういうある意味でのバランス感覚だったり、器量が大きくなったというと言いすぎですが、そういう変化が自分のなかにおこったのは、やっぱり僕自身がここ数年で、マイノリティになる、という経験をしたことが大きいんだろうなぁと思ってます。
ドイツに住んで、「ドイツ人ではない」というだけでいやな思いをしたり、全く畑違いの業種に転職して、これまで正しいと思っていたやりかたを否定されたり。
マイノリティの掲げる正義って、ほとんどとりあってもらえないなぁ、という経験をできたことが、人生経験としてとてもよかったのだと思います。
まずはそういう境地に(ようやく)至った、ということが新鮮かつ少し嬉しい、ということ。

ただ、ここまでの話は単に僕が自己正義を振りかざすお子様だったというだけで、舞台を見ている多くの人は「これが世の中だよね」という感じだと思うのですが、やはりこの舞台の最大の見どころは、主役の2人が2つの正義の落とし所をどうやって見つけるか、だと思います。
落とし所というのは、単純に2つの正義の妥協点を見つける、という作業ではなくて、2つの正義が両立する第三の正義へと昇華する、というプロセス。
お互いがの正義に固執して物別れに終わるでもなく、しかし正義を捻じ曲げるでもなく。

舞台おもしろいなぁ。TVで見ても十分おもしろい。これははまりそう。


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わたしがマジョリティを嫌悪するのは、真の多数派など存在しないのに、ある限定された地域での、あるいは限定された価値観の中でのマジョリティというだけで、危機に陥った多数派は少数派を攻撃することがあるからだ。そしてマイノリティといわれる人々も、その少数派の枠内で、細かなランク付けをして、少数派同士で内部の少数派を攻撃することもある。
 忘れることのできない写真がある。それは大戦前のドイツでユダヤ人たちがひざまずいて通りを歯ブラシで磨いているという写真だ。その人物がある宗教に属しているというだけで、その人物の人格や法的な立場とは関係なく差別するというのはもっとも恥ずべき行為だが、わたしたちは立場が危うくなるとそれを恥だと感じなくなる。
 わたしはどんなことがあっても、宗教や信条の違いによって、他人をひざまずかせて通りを磨かせたりしたくない。それはわたしがヒューマニストだからというより、そういったことが合理的ではないというコンセンサスを作っておかないと、いつわたしがひざまずいて通りを磨くことになるとわからないからだ。
 わたしたちは、状況が変化すればいつでもマイノリティにカテゴライズされてしまう可能性の中に生きている。だから常に想像力を巡らせ、マイノリティの人たちのことを考慮しなければならない。繰り返すがそれはヒューマニズムではない。わたしたち自身を救うための合理性なのだ。
(村上龍「恋愛の格差」より)
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その妹



市川亀治郎×蒼井優の舞台「その妹」をWOWOWで鑑賞。原作は武者小路実篤。

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明治時代末期。画家として将来を嘱望されていながら、戦争で視力を失った野村(市川亀治郎)は、美しい妹の静子(蒼井優)とともに叔父夫婦の家に身を寄せていた。絶望となんとか折り合いをつけながら作家になる道を探る野村を、静子は筆記を手伝いながら献身的に支えて暮らす。そんな中、静子は叔父夫妻から意に沿わぬ縁談を迫られ、兄妹は苦境に陥る。
状況を知った野村の友人で編集者の西島(段田安則)は、野村と静子を支援することを決意。叔父夫妻のもとを離れた2人の生活費を、身を削って工面する。西島が友情を越えた感情を持ちつつあることを、妻の芳子(秋山菜津子)は敏感に感じ取っていた。
試練が続く中、自らを奮い立たせながらも、現実に押しつぶされそうになる野村。そのかたわらで、静子はある思いを胸に秘めていた…。
WOWOW番組紹介より)
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市川亀治郎、蒼井優の演技がすごい。
正直暗い話なんですが、会話のテンポのよさと舞台独特の声量の大きさのせいか陰気な感じにならずにぐいぐい引き込まれるし、日露戦争後という時代背景も正直あまり馴染みがないのに、2人の演技を見てるとなんとなくその時代にいるような錯覚を覚える。
舞台モノをTVで見るのってどうなのかと思ってましたが、ある意味映画より緊張感だったり迫力だったりがあるような気がします。
もちろん観にいくのはもっといいんでしょうけど。

「思い通りにならないことばかりでも、生きてさえいれば希望がある」という、どこか使い古されたような格言は、辛い現実を前に絶望している人にかける言葉としてはあまりにも無責任に感じてしまうし、実際そんな言葉をかけられたからといって、それだけで当の本人が前を向けるほど簡単ではない。
人からかけられる言葉としてではなく、当の本人が自らの信念としてその言葉を語る場合にのみ、この格言は人生を光を差し込むことができる。
静子(蒼井優)はそういう強さと輝きを持った人間であった。

僕もそうでありたい。
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