シェエラザード〈上〉 (講談社文庫) (2002/12) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
シェエラザード〈下〉 (講談社文庫) (2002/12) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
「物事の本質を考えましょう」「表層的な事実を鵜呑みにするのは危険です」というのは、職業柄いやというほど叩き込まれているけれど、しかしまあ、本質なんてそう簡単に見えるものでもなく。
そして、表面的事実だけで意見する、批評する、というのは大変危険で、本質を知っている人間から見ると、そうした意見をいう人は、時に「何も知らずに的外れで心外な意見を平気でいう人」になり、時に「表層的事実に騒いで真実隠蔽に一役かった人」になり、いずれにせよ「底の浅い人」と見られることに相違ない。
意見をしたり批評をしたりすることがいけないのではなく、意見の前提となる事実を自分がどう認識、把握しているかを常に見つめなおさなければならないのだ。
熟慮するくせをつけなければならないのだと痛感。だいたい僕は、仕事はともかくとしてそれ以外のことは短絡的に考えすぎている。
もう1つ難しいのは、結局、本質は1つではない、ということ。
「あなたにとっての本質は、私にとっての本質ではない」というのが本質、といういかにも哲学的な、かつ堂々巡りな議論がそこにはあり、そしてそれが世界の成り立ちなのだ。
だから宗教はたくさんあるし、「いや、そんなつもりで言ったんじゃないよ」みたいなセリフが日々世界中で聞こえてくるわけで。
結局世の中は不完全で、人間も不完全だということを認め、不完全性に美学を感じられるようになるのが、僕の目指す大人のスタイルなのかも。
しかし、多くの人が書評に書いているけど、この本で描かれている日本人は、かっこいい。
日本人であることを誇りに思える。
とにかくシェエラザードは、読み物としてもおもしろいし、いろいろ考えさせられることも多く、再読に値する本だと思う。
話はそれるけど、本質を隠す、という意味では、容疑者Xの献身(ようやく読んだ)もおもしろかった。
容疑者Xの献身 (文春文庫) (2008/08/05) 東野 圭吾 商品詳細を見る |
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