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ビジネスの話で、「デファクトスタンダード」がテーマにあがると必ずと言っていいほど例に挙がるVHSとベータの開発物語。
すごくいいですね、この映画。
どこまでが事実に基づいているのかわかりませんが、VHSが相当土壇場まで追い込まれていたとは知りませんでした。
この映画のハイライトは、何といっても西田敏行演じる事業部長の事業への情熱が、チームを一丸にし、本社経営陣を覚悟させ、さらには競合メーカーまで説得する、というストーリーなんだと思います。
僕も大きな組織に属すようになってわかりましたが、ものすごいエネルギーが必要ですよね、これ。
自分のやりたい方向性が組織の「空気」と反対を向いている時って、ほとんどの人に話が通じないし、説得できないし、動いてもらえない。
この映画の前半での渡辺謙がそういう役なんだと思いますが、大企業で働く人ってすごくリスクに過敏だと感じます。変に目立って失敗するよりは、おとなしくしてたほうがいいって人がすごく多いように思います。
当時もそうだろうし、選択肢の増えた今の時代に大企業を選ぶ人はなおさらそうなのかも。
そういう人たちを、ビジョンと、情熱でひっぱって、少しずつ巻き込んでいくというのは、途方もないことで、僕はだいたい話の通じない人にあうと興味を失います。こんなやつらとやってられるか、と。
組織で働く以上は、それじゃだめだなと最近痛感。けっきょくビジネスって人ですからね。
ただしそれは、人情味を持たなきゃということではなく、情熱を持たなきゃということのような気がする。ようは情熱を持てる仕事のしかたをしないといけない。
一方で、経営陣側に立ってこの映画を見ると、これって複雑な映画ですよね。
本社の役員(?)が、「このVHSが成功しても、君の仕事の進め方は間違っている」と西田敏行演じる事業部長に話す場面にそれが集約されていると思いますが。。
先行きのわからない事業への投資をどこまで継続するのか、逆に言えば、撤退基準をどう設定するか、というのは、経営する側からすれば非常に重いイシューだと思います。
開発は当然自分たちの技術を我が子のようにかわいがり、思い入れを持っているのでまずやめようとしないし、事業の撤退となると、それまでその事業に携わってきた人の努力をある意味無に帰すわけですから、その反発は相当なものです。
かつて事業のリストラプロジェクトをやった時も、撤退を提案された役員が怒りにまかせて罵声をあびせる中で撤退を決断できる経営者もいれば、あと一年、あと半年、とずるずるひっぱってしまう経営者もいる。
不採算事業の延命は、企業全体の業績に致命的になるケースが大半で、今回のように逆転ホームランを打てるのは本当にまれ。
今回のケースは、消費者ニーズをしっかり理解していて、だからこそ開発のエゴではないのだ、という見方はできるかもしれませんが、それも結果論かなとも思います。
僕は冒頭で「VHSがここまで追い込まれていたとは知らなかった」と書きましたが、裏返せば、ここまで追い込まれる前に撤退の意思決定をするだろう、と思ってたからなのかもしれません。
あと1つ思ったのは、父親がいい仕事をすると家族の絆は深まりますね。
子どもたちが父親の背中を尊敬のまなざしで見ていたラストは印象的でした。
背中で語れる父親を目指さねば。
本当にいい映画でした。
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