義経〈上〉 (文春文庫) (2004/02) 司馬 遼太郎 商品詳細を見る |
義経〈下〉 (文春文庫) (2004/02) 司馬 遼太郎 商品詳細を見る |
源義経が人気があるのは、彼は悲劇のヒーローであり、軍事的天才であり、一方で人間として不器用であり、といったこともあるのだろうが、僕が彼をかっこいいと思うのは、「彼は貫くべき信念を持っている」という点だ。
その点では頼朝も同じであり、「鎌倉に幕府を作る」という信念を貫いて行動しただけである。
明確なコントラストで描かれている頼朝と義経だが、信念を貫いたという点では同じであり、信念を貫く強い意志を持ち合わせていたという点で似たもの同士の兄弟に思える。
「遠く離れていても、彼なら自分のことをわかってくれる」という考えは、たしかに甘い。
顔が見えないというだけで、人はいくらでも疑心暗鬼になり、悲観的な想像をしてしまう。
信じられないほど馬鹿げた讒言だけでも、長年の信頼関係を一瞬で吹き飛ばすだけの威力を持っている。
長年つきあったカップルが遠距離恋愛をきっかけに破局する、というのはありふれた話であるが、それは「お互いが距離を超えられるほどの信頼関係を作れていなかった」などという簡単な理由づけですまされるべきものではなく、もともと人間が持っている、「見えないものへの恐怖」に対する配慮をどこまで徹底できるか、を真剣に考えなければならない。
信念というものは、我々が他人の人生に踊らされることなく、自らの人生を幸せに生きるための鍵であるが、忘れてはならないのは、自分の信念を支えてくれている人への配慮である。
それは、家族でもあり、恋人でもあり、友人でもあり、会社組織でもある。
配慮なき信念は、わがままにすぎない。
というようなことを実感を持って感じるに至ったのは、海外駐在での経験あってこそだろう。
われながら昔よりずいぶん多感になったな、と感じる今日この頃。
0 コメント:
コメントを投稿