The Power of Silence

L1000006.jpg


同僚のヨルグは、コンサルファームや投資銀行を転々とし、さらにドイツ空軍で兵站を担当していた経験もあるドイツのエリート。
他のドイツ人と違って体型もスマート、見た目も若いが、実は40を超えているそうだ。
イギリスに留学経験があるらしく、英語は訛りの強いブリティッシュで、時折聞き取れない。
ディスカッションの時に時折見せる鋭い眼光は、軍隊時代に養われたものなのだろうか。
怒らせると怖そうだ。

彼とディスカッションをしていていつも感じるのは、気づいたら自分が説明責任を負わせれている、彼に対して報告義務がある、そんな関係で話が進んでいることだ。
ミーティングのイニシアティブをいつも取られてしまう。
自分の思い描いていたシナリオを簡単に破られてしまう。

一体何がそうさせているのか、よくよく観察してみると、彼は「間合い」の取り方が抜群にうまいのだ。
例えば、彼に何か意見を求めるとする。
すると彼は、"In my point of view"と高らかに言った後、すぐに意見を言わず、5秒、長いときは10秒くらい沈黙を作る。
彼は熟考しているようにも見えるし、大事なことを言うために言葉を探しているようにも見える。
ディスカッション中の5秒間の沈黙は、時に永遠にも感じられ、聞き手は否が応にも次の言葉を「待つ」、つまり「聞き入る」体勢にさせられる。
ミーティングの場に緊張感が生まれる。

そうした後に発せられる彼の言葉は、後で振り返ればなんてことは言ってなくとも、その瞬間はこれ以上なく重みのある意見として場に提供され、反論を許さない。
こうして彼は、議論を自分のペースに持ち込み、場を支配する。
同じような場面は、例えばバスケットボールの試合で、カウンターだ速攻だ、という場面で、ボールをもらったポイントガードがピタっと足を止め、試合のリズムを変えてしまうような感じだろうか。
そういうときは、なんとなくこのポイントが勝負だ、という雰囲気になるし、何か深い策があるように感じるものだ。
��書いてみると微妙な喩えだが。。)

なにしろ、会話のペースを変えることで、自分のペースに持っていく、自分の言葉に重みを持たせる、というテクニックは、ビジネスの世界では極めて有効だと実感。
日本でこういうテクニックを使う人を見ることはほとんどないが、ぜひうまく使えるようになりたいものだ。
単なるテクニックとしてだけではなく、沈黙を怖れず、その場で熟考する勇気は、正しい意思決定のためにも必須であると強く思う。

0 コメント:

コメントを投稿